所得税申告書作成の真っ最中だと思いますが、読者の皆様は正しく課税所得を申告していらしゃいますか。給与、ボーナス、チップ、利子、配当等が課税対象の収入になるという事実は殆どの皆様がご存知だとは思いますが、今回は意外と知られていない課税対象となる収入をご紹介致します。
違法行為による収益
違法行為(麻薬、密売、横領)から得られる収益は、元々の活動自体が違法なだけに課税対象外と思われがちですが、米国税法上れっきとした課税所得として認識されています。内国歳入庁は課税所得に対し合法・違法行為の区別をしておらず、それらから得られる収益全てに対して課税・徴収する権限が与えられております。違法行為に対して直接処罰はいたしませんが、所得の申告漏れがあった場合には現行の税法にのっとり摘発を行います。
保険金
保険契約者が受け取る死亡保険の保険金は非課税ですが、保険金に対する利子収入は課税対象となります。契約書に死亡保険金が明確に記載されていない場合や、生命保険を途中で解約し積立金の払い戻しを受ける場合は、受取金が保険料金を超える部分に対して課税所得とし申告する必要があります。ただし末期症状の患者本人が生命保険の払い戻しを受ける場合には、例外的に非課税扱いとすることが認められています。
訴訟による受取金
給与の損失補てんとして受け取る補償金や、身体的損害以外(差別、契約違反、プライバシー侵害、名誉毀損、ハラスメント等)に対して支払われる補償金は全額課税所得となります。また、身体的損害を受けた場合でも死亡したケースを除き、懲罰賠償として支払われる金額に対しては課税対象となります。
陪審員手当て
米国民の義務として出廷を命じられる陪審員の審議手当てとして受取る金額もれっきとした課税対象所得です。ただし受け取った金額をそのまま雇用者に支払う義務がある場合は、一旦収入として認識する必要がありますが、同額を減額調整し申告することができます。
失業補償金
失業中に受け取る失業補償給付金もれっきとした課税対象所得です。通常、給付額から税金は差し引いておりませんので、それら収入に対する税金分を確保するようご留意ください。
無利子での貸付
無利息あるいは低い利子率で借入金がある場合は、実際の利子授受の有無にかかわらず、連邦利子率を用いて計算された利子額との差額分をみなし利息収入として認識しなければなりません。これは資本主義経済の本質的概念に相反すると言う理由から、1980年代から規制されるようになりました。
債務免除益
借金が膨らんで返せなくなり、銀行などの債権者が債務者に対し借金を免除した場合、責務者は免除された金額を所得として認識しなければなりません。しかし、例外もあり、破産申請や差し押さえによる債務免除は課税対象外となります。
社宅や社有車の利用
低家賃もしくは無償で社宅に住んでいる従業員は、時価家賃と個人負担額の差額が給与としてみなされます。社有車の個人利用も、リース料金表などを用いその使用価値を決定し所得として課税されます。
物々交換
所有物やサービスを物々交換した場合は、同種資産の交換取引以外、受取った物またはサービスの市場価格を所得として申告する必要があります。これはもし直接金品による取引が行われた場合、本来なら同額の収入が得られたであろうと言う考えから成っております。
ギャンブル・賞金・賞品
ギャンブルによる損失を差し引いた後の純利益は全て課税対象となります。奇妙な話ですが、ギャンブルを職業とする納税者に対しては、それに掛かる旅費は全て経費として計上出来る事が認められています。テレビ番組や各種イベントの抽選で当たる賞品(車・旅行券・ギフト券)に対しては、その受取った賞金・賞品の市場価格(抽選くじを購入した場合には、購入費を引いた差額)が所得として見なされます。またイベント主催者が非営利団体だとしても、受け取る賞金・賞品は所得として認識されますのでご留意ください。
余談ですが、無償で古い家を改築してくれるABC放送の人気番組「Extreme Makeover Home Edition」をご覧になった事がありますか。本来なら贈り物として受け取った資産(家、家具、自動車など)の市場価格を所得として認識する必要があるのですが、番組もいろいろ現行の税法をかいくぐり非課税になるよう対策を立てているようです。内国歳入庁も現在のところは非課税扱いとしているようですが、この件に関して多くの意見が交わされており、今後の動向が気になるところです。しかし、贈り物に対する税金も発生せず本来ならハッピーエンドになる筈なのですが、翌年に跳ね上がった光熱費や価値の上がった家に対する固定資産税を払えず、善意で改築してもらった家を差し押さえられたケースも出ているようです。