米国と日本は税金が高い国だと言うことは耳にしたことがあると思いますが、実際他の国に比べてどのくらい高いのかと疑問に感じたことはないですか?今回はGardere Wynne Sewell 法律事務所で移転価格及び国際税務を専門にされている古屋宏晃氏に、日、米、その他諸外国の税率の差について説明をしてもらいたいと思います。
今回特別ゲストとして税金コラムを書かせていただく古屋です、よろしくお願いいたします。さて、今回は日・米・その他諸外国における税率の差はどのくらいあるのか、企業が支払う税金(法人税)の観点からご説明したいと思います。米国では連邦レベルでの法人税が35%で、これに加えて州の法人税が課される仕組みになっています。テキサス州は法人税を課しませんが、カリフォルニア州は最大で9%、ニューヨーク州は7%と、州によって異なります。全米平均では法人税率(連邦税と州税の合計)が39% になるようです。それに対して日本の法人税率(2011年度)は41%と、米国と大差ない状況です。それでは日・米の税率の高さは世界的に見た場合、一体どれくらいのレベルなのでしょうか。米国は世界で2番目に法人税率が高く、日本は堂々の1位に収まっています。実は日米両国は自国の企業に対して最も多くの税金の負担を求める国なのです。
では他の国はどうなのでしょうか。実は国によってかなり税率の開きがあるのです。極端な例としては非常に低い税金しか課さない国や地域、いわゆるタックスヘイブンが存在します。代表例としてはケイマン諸島やバミューダ諸島になりますが、これらの地域では法人税がゼロのため、企業は税金を負担しません。税率がゼロというのは極端ですが、他にも税金が低い地域はたくさん存在します。一部の統計によると全世界の15%の国や地域が低税率国に該当すると言われています。
また、近年では世界的に法人税率を引き下げる傾向にあり、多くの先進国の税率は20%から30%の間で、30%を超える国は少なくなっています。経済協力開発機構(OECD)が発表した2011年度の統計によりますと加盟国34 カ国(ほぼ全てが先進国)の税率は以下に示すとおりです。
法人税率 |
国 |
20%未満 |
5 |
20%~30% |
24 |
30%超 |
5 |
合計 |
34 |
税率が30%超の国は米国と日本以外にはベルギー、フランスとドイツで、欧州ではこれらの国を除くと税率がだいたい20%から30%になっています。ちなみに20%未満の国はアイルランド、チェコ、ポーランド、ハンガリー、スロバキアになります。この他にもスイス、オランダ、ルクセンブルグ等は様々な税制優遇措置があるため、実際の税率は20%をはるかに下回ります。
それでは、国によって税率が違うと企業にどのような影響があるのでしょうか。一般的に大きな影響があると言われているのは企業競争力です。例えば日・米の企業は100の所得に対して40の税金を支払うので、手元には60が残ります。配当金の支払い等を考慮しなければ、これらの企業は60を事業に再投資できることになります。それに対して、100の所得に対して10の税金(税率10%)しか支払わなくてすむ企業は、手元に90もの再投資資金が残るのです。単年度で見た場合は30%の差になりますが、これが10年、20年と続いた場合はどうでしょうか。投下資本に対して20%の運用益を得られる企業であれば、20年後には約3倍の開きが出てきます。この様な状況では企業価値も3:1になりかねず、グローバル化が一段と進む現在では税率差は企業にとって切実な問題となっているのです。そのため、グローバル展開をしている多くの欧米企業は、移転価格プランニングを中心としたタックスプランニングを積極的に行い、税率を極力低く抑えることで企業競争力を維持または高める努力をしています。