読者の皆様の中には、日本で預金口座をお持ちの方も多いと思います。今回はそんな方に役立つタイムリーな情報をご紹介いたします。
米国以外に預金口座(例えば日本の銀行口座)をお持ちの方で、その合計額(利子額ではなく口座残高の合計額)が2010年度中のいずれかの時点で一度でも$10,000を超えた場合には、所得税申告書とは別に様式TDF90-22.1を毎年6月30日までに米国財務省に報告する義務があります。なお、上限$10,000の規定は、ある口座の残高が$10,000を超えた場合にその口座だけを報告をするのではなく、各口座の残高を全て足した総合計額が$10,000を超えた場合に、全ての口座($10,000未満の口座も含み)を報告する義務があります。また、外国貨幣から米ドルへの変換計算には12月31日付けの為替レートを使用する事と定義されています。
開示の対象となっている口座は、銀行、証券株式、投資信託、生命保険の投資口座などとなっており、対象者は米国市民、永住権保有者、米国居住者または米国内で何らかのビジネス活動を行っている個人・法人またはそれに順ずる団体が対象となっています。開示情報の内容は、口座名義人、銀行・証券会社名、銀行・証券会社住所、口座番号、口座の種類それと各口座の年間最高残高となっています。
ここで注意して頂きたいのが、口座の情報を申告することによって特に残高に対して米国で課税をされるという事ではなく、単なる情報開示義務という点です。また他の申告書とは違い、様式 TDF90-22.1 は申告の延長は認められていません。
実はこの規定は30年以上前から存在していますが、2001年の同時テロ事件以降、海外口座の状況を把握しておきたいという、テロ資金対策の一環として近年強化されてきました。強化が始まった2001年当初、財務省がこの規定の実状の調査を行ったことろ、規定は30年前からあったものの、実際に罰則が課せられたケースは過去30年でたったの2件だったそうです。すなわち、報告義務は法実状規定されていましたが、実質なんの施行もされていなかったことになります。
2001年に法律化された「USA Patriot Act」でこの規定の報告義務が強化され、その後2004年の「American Job Creation Act」で未報告に対するペナルティー規定が大幅に強化されています。その法律では、未報告に対しては$10,000の罰金、所得が適切に申告されている場合には報告しない理由として罰則が免除される場合もありますが、意図的な隠蔽に関しては$100,000または「銀行口座の最高残高50%」のどちらか低い額の罰金が規定されています。
この規定が近年さらに注目を集めているもう一つの理由は、米国の富豪者が税金対策としてスイス銀行のような匿名口座に資金を隠している例が後を絶たなかったからという実情も背景にあります。
それでは、簡単に報告方法についてここでご説明いたします。
- 様式 TDF90-22.1 をIRSサイトから入手
- 様式へ情報を記入
- 内容の確認後 様式へ署名・日付
- 6月30日必着で下記の住所へ提出
[ 郵送先住所 ]
U.S. Department of the Treasury
P.O. Box 32621
Detroit, MI 48232-0621