2012・2013年度税制の比較

 

年末年始に掛けて「財政の崖」で騒がれていたブッシュ減税の失効ですが、多くの方が今年4月に申告期日を迎える2012年の所得税に影響がでると考えている方が多いようです。しかしながら、ブッシュ減税は2012年12月末まで有効でしたので、皆さんが今準備をされている2012年所得税申告には大きな影響はありません。年始に可決された法案では、ブッシュ減税が失効する2013年以降の所得への税制について民主党と共和党の間で議論がなされていました。

今回は2012年の税制と年始に可決された2013年の税制について、主に個人所得税の観点から簡単にご紹介いたします。

所得税率
今回の法案では、中間所得層に対する減税を恒久化し、現行累進税率(10%, 15%, 25%, 28%, 33%, 35%)を維持し、2013年以降は新たに最高税率の39.6%が夫婦合算申告者の$450,000以上(夫婦別申告者の場合は$225,000以上)、独身の$400,000以上、特定世帯主(head of household)の$425,000以上の所得に課されることとなりました。今回の法案が施行され影響を受けるのは2013年以降の所得ですので、2012年は所得が例え$1,000,000でも35%の税率が適用されます。

人的控除・項目別控除
ブッシュ減税とその後の時限立法により、停止されていた人的控除(日本でいう基礎控除、扶養控除等に相当)と項目別控除の逓減(phase-out)が2013年より復活し、夫婦合算申告$300,000以上(夫婦別申告は$150,000以上)、独身$250,000以上、特定世帯主$275,000以上の納税者に対して所得に応じて人的控除と項目別控除が段階的に減額されます。2012年個人所得税計算ではまだ減税が失効していないため、控除額の逓減はありません。

長期キャピタルゲインと適格配当所得の税率
2012年度は長期キャピタルゲインと一定の条件を満たした適格配当所得の税率は15%にて課税となり、タックスブラケットが10%と15%の納税者は0%となります。

法案施行後の2013年の長期キャピタルゲインと一定の条件を満たした適格配当所得の税率は通常所得の金額が39.6%のタックスブラケット(所得区分)に入っている納税者は20%となり、さらにMedicare contribution tax 3.8%が加算され23.8%となります。通常所得のタックスブラケットが中間層の納税者の税率は15%(あるいは18.8%)、タックスブラケットが10%と15%の納税者は0%となります。

代替ミニマム税
AMTとは、一定の控除額以上の所得に対して最低限28%(一部は26%)の課税がされるよう通常の所得税とは別に税額を計算するシステムのことをいいます。1969年の導入以来、租税上の優遇措置等により通常の所得税の計算によると極端に実効税率が低くなるような場合の補正措置として機能してきました。当初は高額所得者に対する課税を想定しており、AMT計算上の所得控除額もそれに対応して設定されていましたが、インフレ調整条項はありませんでした。そのため所謂“AMT-Patch” を毎年度議会が議決して、所得控除額を引き上げることにより、中間所得層に代替ミニマム税がかからないよう調整してきました。2012年については未だこのAMT-Patchが制定されていなかったため注目を集めていたが、今回このAMT-Patchがインフレ調整条項付きで恒久化されることになりました。2012年については夫婦合算申告$78,750、独身$50,600のAMT-Patch額が2012年1月1日に遡って適用されます。

子女税額控除
年度末において17歳未満の適格扶養子女がいる場合に税額を控除できます。一人当たり$1,000の子女税額控除が今回の法案で恒久化されました。

給与税
オバマ政権になってから実施された減税策です。これまでは、社会保険税の従業員負担税率が6.2%から4.2%に軽減されていました。この軽減税率が2012年度末をもって終了し、2013年からは6.2%の社会保険税が源泉徴収されています。既にこの減税失効は2013年1月の給与から反映されているので、皆さんの中でも今年から手取りが若干減っているのに気づかれた方もいらっしゃると思います。

遺産税と贈与税
2012年12月31日より後に死亡した納税者の遺産について、現行の遺産税と贈与税の課税控除金額である$5,000,000が保持されましたが、税率は現行の最高35%から最高40%へ上昇しました。2012年の控除金額はインフレーション調整により$5,120,000となっていて最高35%の税率で課税されます。なお、以上はアメリカ市民を前提にしており、グリーンカード保持者やその他のビザ所有者で、日本国籍を持つ方はこの限りではないので注意が必要です。

以上見てきたように、中間層までの納税者に対してはブッシュ減税が延長された形になっています。今年の個人所得税の申告期日は4月15日です。何らかの理由で申告期日までに間に合わない場合は、延長申請(様式 4868)を提出することにより、6ヶ月の延長が可能です。ただし延長が適用されるのは申告書の提出期限のみで、税金の納付は4月15日までに行う必要がありますのでご留意ください。

 

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