会計士は帳簿の記帳や申告書の作成以外に、いろいろな税務対策のアドバイスなども行います。離婚調停に関わる会計士は、離婚協議の対象となる財産や負債の確認と算定を行う事もありますが、最も重要な役割として離婚に際する税務対策などの助言が挙げられます。
離婚前の注意事項
離婚前に注意していただきたい税務事項はいろいろありますが、特に気をつけていただきたい事項を次に挙げてみました。
① 申告身分
12月31日時点で離婚が成立していない場合は、通常夫婦合算申告または夫婦個別申告の何れかで申告を行わなければいけません。ただし扶養家族を含む一家の生活費を半分以上負担し、離婚相手が6ヶ月間以上別居している場合には、法律上婚姻関係にあっても特別に世帯主として申告する事が認められています。世帯主申告は、夫婦個別申告に比べ低税率・高控除額などの恩恵を受けることが出来るため、離婚調停中の方は特にご留意ください。
税金対策の一環として離婚を行い、翌年に同じ相手と結婚予定の場合には、税法上独身と認められないため、法律上離婚が成立した年度も既婚者として夫婦合算申告または夫婦個別申告の何れかで申告をする必要があります。
② 連帯責任
夫婦合算申告を行った場合には追加徴税の支払い義務は夫婦に課せられるため、申告後に離婚をしても離婚判決の内容に関係なく両者に支払いが義務付けられます。厄介なのが離婚判決の一部に「一方の配偶者が全ての納付義務を負う」とはっきり明記した場合でも連帯責任は免除されませんのでご留意ください。
③ 給料の取り扱い
財産のみならず給料の分割取り扱いは、居住されている州が夫婦共有財産州 (Community Property State) か判例法重視州 (Common Law State) かで大きく異なる事は先月紹介しましたが、1年以上別居生活をし夫婦個別申告を行う場合には、夫婦共有財産州に居住していても給与は収入を得た方に帰属されます。前述の条件を満たさない場合は、夫婦共有財産州で離婚が成立するまで得られた給料は全額共有財産として両者に帰属されます。
逆に判例法重視州で得られた所得は、離婚成立の有無に関わらず別居を始めた日から収入を得た各個人に帰属されます。
④ 資産の夫婦間譲渡
通常離婚判決による夫婦間での資産譲渡で発生する譲渡益は認識する必要がありません。ただし資産を受取る配偶者が米国非居住者の場合には、前述の特例が認められないため受取った側は譲渡益を認識しそれに対し税金を支払う必要があります。
⑤ 家の売却時期
家を売却した場合、夫婦合算申告なら$500,000 の売却益が免除されますが、その他の申告身分(夫婦個別、独身、または世帯主)では$250,000 しか免除されません。また免除を受けるためには過去5年間の内最低2年間以上住んでいる事が条件となっています。節税対策をするという意味でも家を売却する時期に細心の注意を払う必要があります。
⑥ 控除可能な費用
離婚調停に費やした弁護士費用や裁判費用は控除として認められていませんが、離婚手当 (Alimony) を確保するために支払った弁護士費用は控除として認められています。また税務対策や財産分与対象の財産査定のために支払った経費も控除として認められています。