先月ふと目に留まったニュースの見出し「車社会の環境変化によりガソリン税が高騰の兆し」。ご存知のとおり、公共交通機関が充実していないテキサス州では他の大都市に比べ車への依存度が高く、ガソリンの値段に対し自然と敏感になるものです。今月はガソリン税の概要を紹介しつつ、冒頭のニュース内容について話をしたいと思います。
ガソリン税の歴史
連邦道路管理局の記録によるとガソリン税は1919年にコロラド州、ニューメキシコ州、ノースダコタ州とオレゴン州の4州で導入されたのが始まりのようです。その後ガソリン税は他州へも浸透し10年後にはほぼ全ての州で同様の税法が施行されていたようです。連邦政府がガソリン税を導入したのは1932年で当時は1ガロン当たり1セントを徴収していたようです。
テキサス州とガソリン税
テキサス州政府の情報によると同州で車両登録が開始されたのが1917年で、当時すでに19万台の乗用車と5千台のトラックが走っていたそうです。ガソリン税はテキサス州で1923年に課税が開始され、1ガロン当たり1セントから1927年に3セント、1929年に4セントへと増税されたようです。
1931年当時のテキサス州ではガソリンを「自動車に動力を供給できる原料」と定義していたようですが、1941年にガソリン、ディーゼルと液体ガスの3種類に区分し、それぞれ1ガロン当たり4セント、8セント、4セントを課税するようになったようです。その後、数回税率を変更をした後1984年から一律の税率を採用するようになったようです。現在テキサス州ではガソリンおよびディーゼルの税率は1ガロン当たり20セントとなっています。
ガソリン税は全ての消費に対して課税されるのではなく、連邦政府またテキサス州内の公立学校で使用される車両やスクールバスなどはガソリン税の対象外となります。また道路以外で使用する機器(モーターボート、芝刈り機、農作業器具)に対する消費も課税対象外となっています。
ガソリン税収益の用途
ガソリン税は、道路工事や道路整備費用の補助を目的として導入されましたが、テキサス州では収益の3/4を道路補修事業に、残りの1/4を教育費として活用しているようです。少々古いデータになりますが、2015年度のガソリン税の収益は34億ドルで、州で4番目に高い財源となるようです。
増税の背景
冒頭の話に戻りますが、去る7月1日から13州で一斉にガソリン税の増税が開始されました。増加率が一番高かったのがイリノイ州の52%(1ガロン当たり19セント増)で、その次がオハイオの37%(1ガロン当たり10.5セント増)となります。カリフォルニア州の増加率は10%(1ガロン当たり5.6セント増)ですが、もともと高税率だったため今回の増税によりペンシルベニア州(1ガロン当たり58.70セント)を抜いて全米で一番ガソリン税が高い州(1ガロン当たり60.82セント)となりました。
前述以外に増税に踏み切った10州は、コネチカット州、インディアナ州、メリーランド州、ミシガン州、モンタナ州、ネブラスカ州、ロードアイランド州、サウスカロライナ州、テネシー州とバーモント州となります。
増税の背景はガソリン消費の落ち込みが一因しているようです。温暖化現象の原因となっている温室効果ガスの削減をするため太陽光や風力などの再生可能エネルギーへの移行が加速し、その結果電気自動車が急速に増加しているのは周知の事だと思われます。また技術発展によりハイブリッド車などの燃費が向上するなどガソリン依存度が年々減ってきているようです。
ガソリンへの依存度が減り、ガソリンの消費が落ちる事でガソリン販売から得ていた税収も自ずと減る方程式が成り立ちます。しかしながら現在のところ電気自動車などから税金を徴収する術がなく、各州政府は仕方なくガソリン税を上げざる終えない状況に至っているようです。今後もハイブリッド車や電気自動車の普及が予想される事から、新な方法で財源を確保する事が急務と言えるでしょう。