日米租税条約の改定

 

2019年8月30日に日米租税条約を改正する議定書が日米両政府間で発効されました。改正議定書は、2004年に発効した現行の条約を一部改正する内容で15年ぶりの改正となります。改正に伴い日米両国間の経済活動に大きな影響を及ぼす事が予想されるため、その改正内容を理解する事はとても重要と言えるでしょう。今月は、より影響の大きい改正事項に焦点を当て検証を行いたいと思います。

 
租税条約とは

租税条約とは二重課税の回避と脱税の防止などを目的として当該国間で締結される条約で、日米間では1954年に初めて調印が行われました。条約の正式名称は「所得に対する租税に関する二重課税の回避及び脱税の防止のための日本国政府とアメリカ合衆国政府との間の条約」ですが、一般的には日米租税条約として知られています。日米租税条約はその後日米間の経済環境変化に伴い部分改正され、現行の租税条約は2004年3月30日に全面改正された条約となります。

留意して頂きたいのが、租税条約は日本政府と米国政府間で結ばれた条約のため、連邦税に対して条約の適用を受けることは出来ますが、州または地方自治体レベルの税制に対して効力を持っていません。また租税条約の適用は自動的に受けることが出来ないため所得税を申告する際に条約の適用内容を提示する必要があります。

 
【主な改正事項】

  • 配当に対する源泉免除範囲の拡大(第10条)
  • 支払利子に対する源泉免除(第11条)
  • 譲渡資産の定義変更(第13条)
  • 相互協議に対する仲裁制度の導入(第25条)
  • 相互間におけるの情報交換(第26条)
  • 当局間における税務調査の相互支援(第27条)

 
改正の適用開始時期は異なり、仲裁・相互支援および情報交換に関する規定は2019年8月30日から、源泉徴収対象の租税(支払利子、配当など)は2019年11月1日以降に支払われるものについて、その他の租税に関しては2020年1月1日以後に開始する課税年度よりそれぞれ適用が開始されます。

 

租税 改正前 改正後 適用開始時期
 配当 免税要件:持株割合50%
保有期間:12ヵ月以上
免税要件:50%以上
保有期間:6ヵ月以上
 2019年11月1日
 利子 原則:10%
金融機関の受取利息:免税
原則:免税  2019年11月1日
 譲渡益 不動産保有法人は源泉地国の法人とする 不動産保有法人は源泉地国の法人に限定されない  2020年1月1日
 相互協議 仲裁制度無し 解決されない場合、仲裁を通じて解決する  2019年8月30日
 情報交換 情報交換の範囲は条約濫用に限定 情報交換の範囲が滞納租税債務一般に拡大  2019年8月30日
 徴収共助 相互支援の対象範囲は限定
 
相互支援の対象範囲拡大  2019年8月30日

 

あとがき

今回の改正は配当に対する源泉徴収免除要件の緩和、また支払利子に対する源泉税の免除など日米間の更なる投資および経済交流を促進させる要素が多く含まれています。特に恩恵を受けるのは支払利子に対する源泉税が11月の適用開始以降免除になる点でしょう。また配当の免除規定が従来の持ち株割合50%を超え且つ保有期間が12ヵ月以上である要件に対し改正後は、持ち株割合が50%以上(50%を含む)で且つ保有期間が6ヵ月以上という要件に緩和されました。

以上のように今回の租税条約改正により日米間の投資が一層拡大されるのは勿論の事、日米当局間の協力関係強化により脱税および租税回避に対する防止が期待されているようです。

 

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