今年も師走に入り残すところあと一か月となりました。2020年の大半は、コロナウイルス感染症により経済が多大な影響を受け、また人々の意識や生活環境が大きく変わった年となりました。コロナウイルスとの共存が現実となりつつある昨今、仕事を失った方、転職せざるを得なかった方、また待ち望まれた東京オリンピックが延期になったりと、良いニュースが少ない年だったと思われます。しかしながらこの不安定な状況の中、ワクチン開発も最終段階に入り一縷の光も見え始めてきました。今月は、来る年に期待を込めて経済再生の起爆剤となりうる事項について話をしたいと思います。
経済再生の起爆剤
民主党のバイデン前副大統領が大統領選挙に勝利し組閣作業を進めている最中ですが、コロナウイルス対策が最優先課題として挙げられているのは当然の成り行きでしょう。その上で、景気回復を目的とした税制改正も速やかに行われることでしょう。
来年は、ねじれ国会(下院議席435に対し民主党は222議席、共和党は207議席、未定6議席。上院議席100に対し民主党は48議席、共和党は50議席、未定2議席。)になると予想されるため、バイデン次期大統領を含む民主党主導の法案がそのまま可決される可能性は低いと考えられています。ただし、両党共に経済の立て直しに対しては意見が一致しているため、実際に可決される法案は多少変更されるものの次の政策は実現の可能性が高いと考えます。
① 第二次救済策の一時施行
現在、第二次救済策が上院議会で審議されている最中ですが、大方の予想では年内での合意は難しいようです。全ての法案は上院議会で可決される必要があるため、バイデン次期大統領が大統領に就任したとしても、独自の判断で法案可決を進める事は出来ません。
ただし、法案が可決されるまで大統領行政命令により一時的に臨時法を施行する事が可能なため、2021年1月20日の就任と同時に発令するものと予想されます。仮に臨時法が施行された場合、既に期限切れとなった救済策(一時給付金の支給、失業手当の追加給付、中小企業への補助、学費ローン利息の先延ばし、立ち退きの期限の延長)の復活や新規救済策(老齢年金の増額、最低賃金の引き上げなど)が期待されます。
② 雇用の海外流出対策
雇用の海外流出対策としては、失われた製造業を米国内に呼び戻す事を目的にトランプ政権の下で施行された政策(GILTI法など)をより一層厳格化する事によって米国内の雇用維持と創出を狙っています。またトランプ政権同様に内向的な優遇措置が盛り込まれた政策(メイド・イン・アメリカ税制)を発表し、企業に対し米国内に活動拠点を戻すことに対する金銭的なメリットの付与を約束しています。
③ ワクチンの接種
経済再生のカギを握るワクチン。現政権とは異なりバイデン次期大統領は、科学者や専門家などの意見を重視する姿勢を取っています。また、これ以上感染者が拡大しないよう早い段階で専門家チームも収集しています。ワクチン開発には多大な公費が使われ、実際の予防接種までまだ課題(薬の承認、配送手段など)が残っているようですが、今月中には米国疾病予防管理センター (Centers for Disease Control) の承認が得られ予防接種が開始されるようです。
あとがき
以前の日常に戻るまでもう少し時間がかかるかもしれません。またそれまでの間、自粛をしながら現状に耐える日々が続くことでしょう。ただはっきりと分かるのは「いつか必ず」。そう遠くない未来に期待を込め、また来年は必ず良い年となる事を願い、学生の頃から大好きなジョン・レノンの歌「Watching The Wheels」の歌詞の一文をいろは読者の皆様と共有して今年の結びとしたいと思います。「There is no problem. Only solutions」