ペット費用の控除

 
 
去年の3月から始まったコロナ禍による活動の自粛。未だ変異株などの脅威にさらされていますが、ワクチン接種が進むにつれ私達の日常生活もコロナ禍以前の状態に戻りつつあります。この一年半の間にいろいろな事が起こりました。それらは主に想定もできなかった負の出来事であったと思われますが、働き方や生活環境を見直す新たな日常生活(ニューノーマル)の幕開けでもありました。観光業や飲食業などは特に大きな痛手を被りましたが、なかには業績を伸ばす業界もありました。今月は、業績を伸ばしたペット業にまつわる事項について紹介をしたいと思います。

 
ペット費用の控除

緊急事態宣言や都市封鎖(ロックダウン)の影響で自宅で時間を過ごす事が多くなったと思われます。日頃通勤されていた方は自宅からテレワークし、学生はオンラインで受講するようになりました。また自粛ムードなどの影響で否応なしに自宅で過ごす時間が増えた事は容易に考えられます。それが影響したのか、コロナ禍になってからペットを飼われる方が急増したそうです。新型コロナウイルス救済措置として一時給付金、ビジネス支援金や雇用持続税額控除など多様な救済策が講じられましたが、ペットに関連する救済措置はあるのでしょうか。

コロナの影響で特別にペットに関連する救済策は講じられていませんが、ペット費用を控除できるルールは以前から設けられており次がその主な内容となります。

 
介助動物(サービスアニマル)

ペット愛好家の方々は、飼われているペットを家族の一員として受け入れていると思われますが、税法上IRSの視点から扶養家族として取り扱われていません。しかしながら、ある一定条件を満たした場合、ペット費用を控除する事が認められています。

盲導犬など人間の介助目的で飼われているペットは、関連する費用を医療費として項目別控除 (Itemized Deduction) する事が出来ます。控除の対象となる費用は、介助動物の購入費やトレーニング費用をはじめペットの健康を維持するための費用(ペットフード、ペット用品、獣医費用、毛繕い)なども含まれています。(詳細はIRS 公報502 を参考ください。)

ただし捻出したペット費用が全額控除されるのではなく、控除可能な金額は調整課税所得額 (Adjusted Gross Income) の7.5%以上を超える分のみに制限されていますので留意ください。基本的にセラピー目的の動物は対象外となりますが、PTSD(心的外傷後ストレス障害)を患っている退役軍人などが日常生活を維持するうえで必要と証明できる場合は、控除の対象として認められるケースがあるようです。

 
番犬・使役動物(ワーキングアニマル)

飼われている動物がビジネスを行う上で不可欠な場合、ビジネス費用の一部としてペット関連費用を控除する事が出来ます。日本でよく見受けられる猫カフェがその代表例と言えるでしょう。周知のとおり猫カフェを運営するうえで猫はビジネスを行う上で必要不可欠な存在であるため、猫を維持するために費やした費用はれっきとしたビジネス費用として控除する事が出来ます。趣味で馬を飼われている場合、飼育費用を控除する事は出来ませんが、馬を飼われている方が競馬騎手として生計を立てている場合、関連する費用はビジネス経費の一部として取り扱う事が可能となります。

直接ビジネスと関わらない場合でも動物がビジネスに不可欠と証明できる場合、関連するペット費用を控除する事が可能です。番犬や害虫駆除目的で飼育されている動物が良い例として挙げられるでしょう。その際に、飼われている動物の種類が大きな判断要素として考慮される点を良く理解する事が重要となります。

仮にチワワを番犬として飼われたとしましょう。そのチワワが常に攻撃的に大声で吠える犬であってもIRSの目には番犬として映る事は無いでしょう。その為、番犬を飼い、かつ関連費用をビジネス経費として落としたい場合、誰の目から見ても直ぐに番犬であることが分かる犬種を選ぶことが望ましいでしょう。

またペット費用をビジネス経費として控除するためには、ビジネスとの関連性を証明するのみならず、かかった費用の記録管理も重要となります。

 
里親費用

盲導犬の育成や動物の里親探しを手伝われる場合、その動物のケアに費やした費用を寄付金として項目別控除する事が出来ます。その際に、ボランティアとしてお手伝いをしている団体がIRSから非営利団体として認可されている事が条件となります。その為、友人または知り合いの動物を預かる、または野良犬を保護されても控除する事は出来ません。

 
あとがき

前述のとおり、条件を満たせばペット費用を控除する事は可能ですが、ハードルが高いため利用できる方はそれほど多くいないと思われます。殆どのペット愛好家は動物が好きで飼われると思われます。また犬は「Man’s best friend」と表現されるように、古くから人間の良きパートナーとして認識されています。今飼われているペットを費用控除が出来ない生き物 (Friends without tax benefits) として見るのではなく、一緒に時を過ごす大切な家族の一員として捉えればとても素敵ではないでしょうか。かく言う私も今年の頭にパグの子犬二匹を家族として迎え入れ、悪戦苦闘の日々を楽しんでいます。
 

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