バイデン政権の税制改革法案

 
 
バイデン大統領が就任前から公約として挙げていた税制改革。Build Back Better Actと呼ばれる同法案が現在上院および下院議会で審議されていますが、両議会で過半数を占める民主党としては是が非でも両議会を通過させ、同法案の成立を画策する事でしょう。しかしながら 3.5挑ドルにも上る同法案に対し身内からも難色を示す民主党員もいるようで法制化するまで前途多難と言えそうです。法案が何の変更も無くそのまま成立されることは現実的ではありませんが、今月は同法案の一部に焦点を置いて検証したいと思います。

バイデン政権は、トランプ前大統領が任期中に導入した大型減税政策を負の遺産と捉えており、租税の強化を前面に打ち出しています。特に高額所得層に対する税制改正は必至で、次がその一部法案となります。

 
【 個人所得 】

累進課税最高税率の引き上げ
現行の最高税率を 37% から39.6%へと引き上げ、税率の適用課税所得最低額を独身、世帯主、夫婦合算でそれぞれ $400,000、$425,000、$450,000 に引き下げる。現行のルールに照らし合せた場合、先述の課税所得に適用される税率は独身、世帯主および夫婦合算共に35%となるため、仮に同法案が法制化された場合、同額に対し追加で 4.6%税金がかかる計算となります。

高額所得者に対する追加課税
調整後総所得 Adjusted Gross Income(以下AGI)が500万ドルを超える所得に対し新に追加で3% を租税する。

個人年金積立への追加出資制限
個人年金積立 Individual Retirement Accounts (Traditional、Roth共に)の残高が1,000万ドルに達する口座に対する追加出資を禁じ、同時に最低引出額の開始を早める。

各種税額控除の延長と恒久化
今年の3月に施行された American Rescue Plan Act of 2021 によって一時変更措置が取られている児童税額控除 (Child Tax Credit)を2025年まで延長し、全額還付措置を恒久化とする。更に勤労所得控除 (Earned Income Tax Credit) および扶養家族控除 (Child and Dependent Care Tax Credit) に対する一時変更措置を恒久化とする。

キャピタルゲイン
長期保有キャピタルゲインに適用される最高税率を現行の 20%から25%へ引き上げ、逆に対象となるAGI基準値が現行の独身 $445,850、世帯主 $472,750、夫婦合算 $501,600 からぞれぞれ $400,000、$425,000、$450,000 へと引き下げられます。現行のルールでは AGI が $400,000 の独身納税者に対して適用されるキャピタルゲイン税率は 15% となりますが、同法案が可決された場合、同額に対して25%の税率が適用される事になります。

 
【 法人税 】

固定税率の廃止と税率引上げ
トランプ政権の下2017年度末に法制化された Tax Cuts and Jobs Act of 2017 により法人税率は一律21%へと変更されました。今回の法案は、撤廃された累進課税(課税所得の金額によって税率が変動するシステム)と呼ばれる段階課税方式を復活させ、更に最高税率を 26.5% へ引き上げる。現行のルールでは会社の収益に関係なく一律21%で課税されますが、同法案が法制化された場合、収益額によって異なる税率が適用され、最高税率の場合、追加で 5.5% の租税が行われます。

支払利子の損金制限
課税所得額によって支払利子に対する損金制限制度は現在も設けられていますが、対象となる企業は特に定められておりません。バイデン政権が法制化を画策する同法案では多国籍企業を対象とした新たな支払利子の損金制限制度が盛り込まれているようです。
 
 
【 その他の法案 】

  • 仮想通貨および外国金融口座開示の規制強化
  • 相続税の免除額減額と適用開始時期を2026年から2022年へと前倒し
  • パススルー納税者に対して利用が認められている特別控除の上限制限
  • 煙草商品に対する増税(蒸気喫煙商品含む)
  • クリーンエネルギー税額控除の新たな創設

 

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