先月に引き続きバイデン政権の税制改革について紹介をする予定でしたが、土壇場で一部法案に対して身内の民主党上院議員の反発により同法案に対する投票が保留される事態となりました。実際に法制化されるまで内容が大きく修正される可能性が出たため、今月は個人所得税の基本となる申告身分について紹介をしたいと思います。
申告身分の重要性
毎年アメリカでは納税者の皆様が自ら確定申告を行う習慣があるため、個人所得税の申告書を準備するにあたり Filing Status と呼ばれる言葉を耳された事があると思われます。税法上、申告身分が幾つかに区分されていますが、申告身分によって適用される累進課税や標準控除の金額が大きく異なるので、申告身分の判定はとても重要な事項となります。
通常申告身分は、独身 (Single)、世帯主 (Head of Household)、適格未亡人 (Qualifying Widow)、夫婦合算 (Married Filing Jointly)、と夫婦個別 (Married Filing Separately) の5つに大きく分けられ、それぞれ異なる累進課税が適用されます。一般的に夫婦個別申告に適用される税率が最も高く、続いて独身、世帯主、夫婦合算および適格未亡人の順になります。
申告身分の判定日
一般的に既婚者は、夫婦合算もしくは夫婦個別の何れかを選択することが認められています。結婚をされていない方は状況によって独身、世帯主または適格未亡人として申告をする必要があります。申告身分は12月31日付けの婚姻状況によって判定されるため、年初に既婚であっても年末の時点で法的に離婚が成立している場合、夫婦として申告する事は出来ません。逆に別居状態にある夫婦でも法的に離婚が成立していない場合は、夫婦として申告することが可能です。
独身:扶養家族がいない独身の方は、基本的には独身として申告をする必要があります。独身者は基礎控除額が低く抑えられ、且つ高税率の累進課税が適用されるため、他の申告身分と比較し税金負担が多めになります。
世帯主:独身の方で扶養家族がいる場合は(子供がいる離婚者、未婚の親、または両親や兄弟を養っている方)、世帯主として申告することが出来ます。独身に比べ低い累進課税が適用されるため、税負担は軽減される仕組みになっています。また実際にまだ婚姻関係にありながら事情により6カ月以上別居生活をしている方、または配偶者が非居住者の場合には、世帯主として申告することが認められています。
適格未亡人:配偶者を亡くした方は、以下の条件を全て満たせば特別に適格未亡人として申告をする事が認められています。また当該年度に配偶者を亡くされた場合、その年度のみ特別に夫婦として申告する事が可能です。
【適格未亡人としての条件】
- 昨年または一昨年に配偶者を亡くし、現在再婚をしていない事
- 扶養家族があり、一緒に生活している事
- 生活費の半分以上を負担している事
- 配偶者が亡くなった年度に合算申告を行う事が可能である事
夫婦合算:既婚者は夫婦合算または夫婦個別の何れかを選択する事が可能です。夫婦合算で申告を行う場合、配偶者の所得も課税対象所得として含める必要がありますが、低税率の累進課税が適用されるため、一般的に夫婦個別申告に比べ節税効果を得る事が出来ます。また夫婦合算申告を選択する場合、原則として両者が米国居住者である事が条件となります。
その為、状況により配偶者が非居住者の場合は、「居住者の選択課税」を選択することにより合算申告が可能となります。
合算申告長所 | 合算申告短所 |
• 低税率が適用される • 標準控除が高額(2021年度 $25,100) | • 両者の所得が課税対象 • 連帯納付義務 |
夫婦個別:夫婦どちらかが非居住者の場合、合算申告を行えないため(居住者の選択課税を除く)、夫婦個別として申告しなければいけません。またその夫婦に扶養家族がいる場合、同じ扶養家族に対して両者が同時にクレームする事が出来ませんので、どちらか一方の納税者に割り当てる必要があります。税法上、扶養家族の割り当ては特に規定されていませんので、お互いに話し合って毎年交互に扶養家族として申告をする事が可能です。
個別申告長所 | 個別申告短所 |
• 各自の所得のみ課税対象 • 個別納付義務 | • 高税率が適用される • 標準控除が半減(2021年度 $12,550) |