インフラ投資・雇用法

 

バイデン大統領が掲げる税制改正 Build Back Better Actが先月下院議会の承認を得ました。今後同法案は上院議会で審議される予定ですが、共和党からの強い反発を受けるのは必至でしょう。最終的にと法制化されるまで同法案の一部が変更される事が予想されます。その為、今月は先月の15日に先に成立に至ったインフラ投資・雇用法の一部税務事項について話をしたいと思います。

インフラ投資・雇用法

インフラ投資・雇用法 (Infrastructure Investment and Jobs Act) は、その名称のとおりインフラ整備に対する投資事業が盛り込まれた法律で、約1.2挑ドルもの予算が割り当てられました。主な投資内容は、道路、橋梁、鉄道、空港や港湾などの公共交通機関が対象となりますが、インフラ整備とは直接関連性が低い税務事項も一緒に盛り込まれ法制化されました。次の事項がその主な税務項目となります。

  • 仮想通貨の規制強化

仮想通貨 (Cryptocurrency) を含むデジタル資産に対する報告基準が強化され、対象者は2023年度申告からIRSに対して報告する事が義務化されました。ただし、現時点での報告義務の対象が「デジタル資産を取り扱うブローカー」となっており、且つその定義が曖昧なため仮想通貨採掘業者(マイニング)を含めかなり広範囲となっています。また報告義務対象者の中には、技術的にIRSに対して報告を行う事が困難と予想されるため、今後厳格な基準整備が必要と考えられます。

また前述の報告義務以外に、仮想通貨で1万ドル以上の支払いを行った企業に対して商取引内容の報告を義務付けています。その為、既に仮想通貨で商取引を行っている企業、または今後商取引で仮想通貨の使用を検討されている企業などはコンプライアンス上特に注意する必要があるでしょう。税務共同委員会によるとデジタル資産の報告義務を強化する事により国の税収が280億ドル増加すると試算しているようです。

  • 雇用持続税額控除の終了

コロナウイルス救済策 Coronavirus Aid, Relief, and Economic Security Act of 2020で導入され、追加救済策 American Rescue Plan Act of 2021 によって2021年度末までに延長された雇用持続税額控除 (Employee Retention Credit) が、今回法制化されたインフラ投資法により前倒しで打ち切りとなりました。

本来であれば、2021年12月31日までに支払われた給与に対して税額控除が認められていましたが、インフラ投資法によって対象支給期限が9月30日までと前倒しされる結果となりました。しかしながら、同法律が施行された日にちが対象期限が前倒しされた9月30日以降であったため、雇用持続税額控除の利用を計画していた側から不満の声が噴出したのは否めません。

  • 連邦消費税の復活

環境政策 (Environmental Protection Agency) への支出を目的に創設された連邦消費税は、石油や化学薬品を取り扱う企業に対して課せられた税金でしたが、1995年に失効しました。今回法制化されたインフラ投資法により、2022年7月1日から2031年12月31日の期間限定で連邦消費税が復活されます。税務共同委員会の試算によれば、連邦消費税を復活させることで今後10年間で国の税収が144億ドル増加するようです。

また州間幹線道路 (interstate highway system) 管理の財源であるガソリン税や大型車両税などが2028年まで延長されました。

  • 企業年金積立の緩和延長

企業年金積立に対する最低出資額の緩和政策が2029年から2034年まで5年間延長されました。それにより、対応期間中に企業負担分年金積立額の出資が減ることが予想されます。その結果、企業の課税対象所得が増加する事により国は向こう10年間で税収が29億ドル増加すると試算しているようです。

  • 申告自動延長ルールの改定

コロナ禍の中、2019年度および2020年度の申告期日がIRSの発表によってその都度自動延長されました。また毎年発生する大規模山火事や皆さんの記憶に新しい今年2月の大寒波などの自然災害指定地域住民に対する自動延長なども行われました。今までは自動延長の判断はその都度行われていましたが、改定のより今後はルールに従って申告および納付に対する延長が行われるようになります。

 

コメントは受け付けていません。