電気自動車補助金の詳細

上院、下院議席数ともに過半数を占める民主党主導の下、インフレ低減法案 (Inflation Reduction Act of 2022) が両議会でスピード可決され、バイデン大統領の署名により8月16日に法制化されました。今月は先月号で触れた電気自動車の補助金制度について検証を行いたいと思います。

補助金制度

補助金制度の正式名称は、プラグイン電気自動車クレジット (Plug-in Electric Drive Vehicle Credit) と呼ばれていましたが、先のインフレ低減法施行に伴い補助金の対象車両が燃料電池自動車や水素自動車などにも拡大されたため名称がクリーン車クレジット (Clean Vehicle credit) に変更されました。次がその主な内容となります。

【新補助金制度の主な内容】

  • 自動車メーカに割り当てられた上限台数の撤廃(最大20万台まで)
  • 新車の補助金は最大 $7,500、且つ希望小売価格が普通自動車は $55,000以下、ピックアップ、SUVとワゴン車は $80,000 以下とする
  • 中古車の補助金は最大 $4,000、且つ販売価格が $25,000 以下とする
  • 購入者の所得が新車購入で独身者 $150,000 以下(夫婦合算 $300,000 以下)、中古車で独身者 $75,000 以下(夫婦合算 $150,000 以下)
  • 車両の大部分が北米で製造または組立される事 (Final assembly requirement)

最終組み立て条件

新たに施行された補助金制度で一番注目すべき点は、「北米での製造または最終組み立て条件」と言えるでしょう。現時点で電気自動車の心臓部と言えるバッテリーを含める殆どの部品が北米以外(主に中国)で製造されているため、現状では殆どの電気自動車が新しく導入された補助金制度の条件を満たせないと専門家は指摘しています。その為、北米で電気自動車の販売拡大を画策する自動車メーカーによる部品調達先の変更は必至と言えるでしょう。

補助金制度を管轄している財務省によれば、同制度の条件を満たす車両の最終組み立て確認として以下2つの方法が推奨されています。

【組立条件確認方法】

① 米国エネルギー省 (Department of Energy) 発表情報

次のリンク先から補助金制度の条件を満たした車両の年式および車種を確認する事が出来ます。

② 米国運輸省 (National Highway Traffic Safety Administration) 発表情報

前述の米国エネルギー省発表の情報は、自動車メーカーによる自主的な情報提供を共に集約された情報のため、確実に条件を満たした保証とはならないようです。

その為、次のリンク先から車両登録番号 (VIN番号) を元に最終組み立て地を二重で確認する事を推奨しています。

また移行期間として新しい補助金制度の施行が開始された2022年8月16日以前に電気自動車の購入契約を終結された場合、改定前のルールが適用されます。その為、前述の「北米組立」条件は補助金受給の審査には考慮されません。

補助金の受給手段

現時点で補助金の申請は、対象となる車両を購入された納税者が各々の所得税申告と共に行う必要があります。その為、いったん車両の購入額を全額支払い、後日所得税の申告を行う時点で控除として取り扱われるシステムとなっています。現行の補助金支給手段では電気自動車のさらなる普及が進まないため、インフレ低減法の施行と共に支給手段が改定され2024年以降に補助金の対象となる車両を購入する場合、購入者がディーラーなど販売業者へ補助金の権利を移行する事が可能となり、同額を直接買値から減額して購入できるようになります。

今後の動向

クリーン車補助金制度は現行の制度を段階的に改定する内容となり、第一段階として補助金の対象が改定されました。補助金の対象となる車両は、北米で最終組み立て工程を行う事が条件で、2022年8月16日から適用となります。さらなる改定は2023年以降に発動する予定となっているため、クリーン車補助金制度の利用を考えている方は、購入前後に最新の制度内容を確認する事が重要となります。2023年以降に発動予定の改定は主に中古車 (内国歳入法第 25E条) やトラックなどの商用車両 (内国歳入法第 45W条) が対象で、詳細については準備が整いしだい財務省が発表を行うようです。

コメントは受け付けていません。