退職金

 

退職金の課税

退職金は日米租税条約の恩恵を受けられる規定がなく、給与や賞与などの所得同様、役務提供地(勤務地)により源泉地が決定され、課税範囲は居住身分により確定されます。つまり退職金が支給された時点で米国居住者と判断された場合は、全額課税の対象となりますが、非居住者の場合は、米国源泉分に対してのみ課税されます。

 

 [ 日本での課税 ]

米国同様、日本でも居住・非居住者の分別により課税方法や課税範囲も大きく異なってきます。日本居住者の場合、退職金全額が課税対象となりますが、退職所得控除を受ける事が出来るため結果的には非居住者に比べ税金を低く抑えることが可能です。

逆に非居住者の場合は、日本国内勤務期間(日本源泉所得)のみが課税の対象となりますが、退職所得控除を受けることが出来ない点や20%の高税率で課税されるなどのデメリットがあります。ただしこの場合、米国勤務に対応する期間に関しては非課税扱いとなります。
 

日本居住者

日本非居住者

  • 退職所得控除あり
        • 勤務年数20年以下
      [ 控除額 = 40万 X 勤務年数 ]
      • 勤務年数20年以上
      [ 控除額 = 800万+70万 X (勤務年数 – 20年) ]
  • 控除後50%の分のみ課税対象
  • 累進課税
  • 退職所得控除なし
  • 国内勤務分のみ課税対象
  • 税率20%

 

退職所得の選択課税

前述のとおり、居住者として課税された方が税金をかなり軽減できるため、非居住者期間中に退職金を受取った方には多大な税金負担が発生します。このような不公平な現状を解決するために、非居住者期間に退職金を受取った者に対し「退職所得の選択課税」という特殊な税法が定められています。

退職金受給者は「退職所得の選択課税」を適用する事により、非居住者期間も居住者期間として通算し居住者として退職金の支給を受けることが出来ます。(通常選択をした方が税務上有利である)

 

[ 米国での課税 ]

米国税法上非居住者の方は米国源泉所得(米国勤務期間にあたる分)のみが課税対象となりますが、居住者の場合は源泉地に関係なく退職金全額が課税の対象となります。その際、日本で支払われた税金を外国税額控除として米国の所得税から差引くことが出来ます。
 

米国居住者

米国非居住者

  • 全額課税対象
  • 外国税額控除あり
  • 米国源泉所得のみ課税対象
  • 外国税額控除なし

 

[ 例題 ]

 
 状況

  • 日本企業H社で7年間勤務した後、米国で3年間駐在(勤務総数10年)
  • 退職金 1,000万円を受給

 
 日本非居住者として受給した場合

 – 1,000万のうち日本勤務分の700万 (1,000万 X 7 年/ 10年) が課税対象
 – 1,000万のうち米国勤務分の300万 (1,000万 X 3 年/ 10年) が非課税扱
 – 140万 (700万  X  20%) が源泉徴収されます

 
 日本居住者として受給した場合

 – 1,000万全額が課税対象(控除前)
 – 400万 (40万  X  10年) の控除額
 – 300万 (1,000万  –  400万  X 50%) が課税対象(控除後)
 – 30万 (300万  X  10%) が源泉徴収されます
 

 

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