減価償却

7月 5, 2019

 

バイオリンの名器ストラディバリウスは減価償却できない。先日、興味深い記事が目に留まりましたので今月は減価償却について紹介をしたいと思います。

 
減価償却とは

減価償却とは資産購入費用の計算上での認識方法で、購入した資産の耐用年数 (Useful Life) に応じて費用を配分する会計処理方法を指します。例えばラーメン店が $10,000 の製麺機を一台購入したとします。代金として支払った $10,000 は実際に製麺機を購入した日に実費として出て行きますが、会計上で費用の認識は支払った日に全額を一括費用計上するのではなく、製麺機の耐用年数に応じて費用を配分計上する方法が減価償却となります。

ラーメン店では製麺機自体を、例えば麺を製造する材料である小麦粉のように直接消費する事はありません。また製麺機は一回使用する事で消滅する事は無く通常複数年間継続して使用する事が出来ます。その為、2年前に購入した製麺機が今日も問題なく稼働していると言う事は普通に考えられるでしょう。この場合、製麺機の購入費用は2年前に発生していますが、製麺機を利用する事で長期間にわたりそこから生じる収入を得る結果となります。この様に購入物が複数年にわたり経済的な恩恵をもたらす場合、購入した年に費用を一括認識するのではなく、使用可能期間(耐用年数)に配分して経費認識を行う必要があります。また減価償却の対象となる資産は主に次の条件を満たす必要があります。

 
【 減価償却対象資産の条件 】

  • 資産を所有している事(リース資産は対象外)
  • 営利活動として使用している事(個人使用は対象外)
  • 耐用年数を特定できる事
  • 1年以上使用できる事

 

耐用年数に応じた減価償却費の計算方法は幾つかありますが、定額法 (Straight-Line) と呼ばれる手法が代表格と言えるでしょう。定額法とは購入資産額を耐用年数で割り、定額を均等に配分する認識方法です。例題の製麺機で例えると、耐用年数が10年だと仮定した場合、毎年 $1,000 を経費計上できる計算となります。($10,000 ÷ 10年 = $1,0000)また、減価償却費計算式で使用される「耐用年数」は実際に使用可能な期間を指すのではなく、会計基準で定められた年数を指しますのでご留意ください。

減価償却は時間の経過と共に資産価値が減る事が前提となるため、性質的に価値が減少しない資産(不動産、特許、のれん等)は減価償却の対象とはなりません。また物理的な根拠により減価償却の計算開始日は資産の「購入日」ではなく「使用開始日」となっている点も留意すべきでしょう。

 
税法上の取扱い

会計基準同様に税法上でも減価償却に対する取り扱いはきめ細かにルールが制定されています。税法上の減価償却は MACRS (Modified Accelerated Cost Recovery System) と呼ばれる方式が採用されています。会計上の減価償却と比べ大きく異なる点は経費計上できるスピードが挙げられます。また通常の減価償却の他に一括償却 (Section 168) や即時費用化 (Section 179) など税法上特殊な経費認識も注目すべき点と言えるでしょう。税法上の減価償却計算は設備投資の推進を目的として導入されたため、会計上の減価償却費に比べ費用の損金算入が加速できるよう意図的に導入された背景には「消費国アメリカ」の思惑が反映された事は推察に難くないでしょう。

 
あとがき

冒頭の話に戻りますが、カレーチェーン店「CoCo壱番屋」の創業者が名古屋国税局から修正申告の指摘を受けたようです。ご存知の読者もいらっしゃるかと思いますが、創業者は、音楽普及活動の一環としてストラディバリウスを含む貴重な楽器などを有望な音楽家に無償で貸し出しているそうです。その貸し出し事業の延長で名器ストラディバリウスを減価償却対象資産として取り扱ったのが誤りだったようです。つまり、ストラディバリウスのような世界的な名器は、希少価値がある美術品と同じ扱いをうけるため減価償却資産にはならないようです。