新たな日常の落とし穴

10月 3, 2020

 

新型コロナウイルスの影響で日常生活に対する人々の意識や生活習慣が大きく変わろうとしています。コロナ以前の日常生活は大きく変わり、感染を避けるためお互いに社会的距離を保ちつつ働き方、学び方、また交流の方法などが大きく見直され、皆が新たな日常(ニューノーマル)に順応した生活様式を模索している最中だと思われます。今月は新たな日常に定着したテレワーク(在宅勤務)に焦点を置いて話をしたいと思います。

 
テレワークの影響

IT関連の業種など遠隔から業務をこなせる職業は、日常的にテレワークを行ってきましたが、今回のようにあらゆる業種が一斉にテレワークを導入する事などは誰も予想をしていませんでした。

コロナ禍の中、多くの企業がテレワークに切り替えて久しくなりますが、テレワークに起因する様々な影響を皆実感されている事でしょう。通勤時間の有効活用、交通費の節約、また家族と一緒に過ごす時間が増えるなどテレワークを行うことで得られるメリットに満足されている方も多くいるかと思われます。その半面、テレワークに慣れていない方は作業の効率に満足いかずストレスを抱えたり、仕事とプライベートの繰り替えに苦労したりと負の面に悩まされている方もいると思われます。

 
勤務地に束縛されない働き方

会社に出勤する必要が無くなり、日常業務はテレワークでこなす。コロナウイルスの影響で勤務形態が多様化し、今までは夢のような勤務スタイルが現実となったことで、日本では都市部を離れ地方へ引っ越す方が増えているようです。ここアメリカでも同様な現象が起こっており、一時的に居住地を離れ実家または避暑地などからテレワークを行う人が増えているようです。

テキサスなど所得税が設けられていない州(以下「非課税州」という)に在住の方には馴染みが薄いと思われますが、所得税が設けられている州(以下「課税州」という)で働く人は常に所得税の事を念頭に入れています。

 
所得税課税ルールの概念

ご存じの通り、アメリカ国内で勤務し給与所得を得ている方は、居住地(州)に関係なく連邦政府に対して個人所得税を納付する義務を負います。連邦所得税に加え、州レベルで所得税が設けられている州の住民は、居住州に対して州所得税を納める必要があります。

ここで注意して頂きたいのが、州レベルの所得税は居住地によって左右されると誤った理解をされている点が挙げられます。確かに居住地は租税の判断を行う上でとても重要な要素となりますが、米国では各州政府がそれぞれ独自の税制を定めており、所得に対する課税基準が異なることを理解する必要があります。

通常所得の課税は、所得の種類(給与、利子、配当、賃貸所得など)によって決定され、給与やボーナスなどの勤労所得は基本的には勤務地(役務提供地)によって租税の判断が行われます。

例えば、ダラス居住の方が一時的にヒューストンの実家に戻りテレワークを行った場合、非課税州であるテキサス州内で完結しますので特に問題はありませんが、仮に課税州(近隣のオクラホマ州、ルイジアナ州など)からテレワークを行った場合、状況によってその州に対して所得税の納税義務を負うリスクが発生します。

最悪なケースとしては、課税州の住民がこれまた他の課税州に移動してテレワークを行うことが想定されます。個人所得税の税制が50州中2番目に厳しいとされるカリフォルニア州の住民がニューヨーク州(50州中3位)からテレワークを行った場合、同じ給与所得に対して両州に所得税を納めなければいけない状況に陥る可能性があります。

 
コロナ禍におけるテレワーク

以前から州をまたいだ勤務形態に対する租税の議論が行われていたようですが、コロナ禍の中急速に浸透したテレワークによって議論が再燃しているようです。ただし、コロナ禍の現状を踏まえワシントンDCと次の15州(イリノイ州、アイオワ州、インディアナ州、ケンタッキー州、メリーランド州、ミシガン州、ミネソタ州、モンタナ州、ニュージャージー州、ノースダコタ州、オハイオ州、ペンシルベニア州、バージニア州、ウエストバージニア州、ウィスコンシン州)は、コロナ禍におけるテレワーク勤務者に対して居住地以外での課税を行わない協定を結んだようです。

現にテレワーク導入に乗じて非課税州(テキサス州、フロリダ州やネバダ州など)へ引っ越しを決断する人が増えているようです。また課税州住民の中には、一時的に税率が低い州または非課税州へ移動して節税対策を行う人も出てきているようです。

前述を踏まえ、実際にテレワークを行っている方で居住地以外からの勤務を検討されている方は、くれぐれも州税制の事を念頭に置いてテレワーク先を決定されることをお勧めします。また同課税ルールの概念は、ワ―ケーションにも該当しますのでご留意ください。