新たな日常の落とし穴(その②)

11月 5, 2020

 

先月は従業員の観点からテレワーク(在宅勤務)における新たな日常(ニューノーマル)の影響を検証しました。今月は、雇用主の立場からテレワークに起因する影響について話をしたいと思います。

 
テレワークを導入する事とは

テレワークを導入し日々の働き方が変わることでいろいろなメリットやデメリットがあるでしょう。メリットとしては主に通勤時間の有効活用、ワークライフバランスの実現、オフィスコストの削減などが挙げられます。デメリットとしては主に仕事に対するオンオフの切り替え、業務効率の低下、コミュニケーションの問題や勤怠管理の難しさなどが挙げられるでしょう。現状のテレワーク環境に対し好き嫌い関係なく社会全体が新型コロナウイルスの感染対策として新たな日常へとシフトしている中、テレワークによる影響を考えることは重要でしょう。

 
事業関連性(ネクサス)

ご存じの通り、米国では各州政府が州内の活動に対し会社法をはじめとする事業活動に関するあらゆる法環境(雇用法、税法等)を独自に制定しています。企業や個人事業主(以下総じて「納税者」と呼ぶ)の活動に対しむやみやたらに課税を行えば経済活動の弊害となりうるため、各州政府はまず対象となる納税者に対して事業関連性(ネクサス)に基づいた課税権を確立する必要があります。

ネクサス (Nexus) とは、日本語に直訳すると「つながり、結び付き」と和訳されますが、実際には該当する事業活動に対し課税に値する活動を意味する用語として認識されています。通常、事業活動を行っている州でネクサスがあると認定された場合、州政府はその納税者に対して課税権を有する事になりますので、該当する納税者はその当該州に対して何らかの申告義務を負う事になります。ネクサスの規定は州によってそれぞれ異なりますが、主に次の要項が判断基準として挙げられます。

 
【 主な租税判断基準 】

  • 当該州で会社を設立または事業登録を行っている
  • 当該州内に事務所や倉庫を保有または賃貸している
  • 当該州内に有形資産(機材、在庫など)を保有している
  • 当該州内で従業員を雇用している
  • 当該州へ定期的に従業員を派遣している

 

テレワークによる租税リスク

コロナ禍の下、多くの方が自宅からテレワークを行われていると思われます。なかには、実家や地元に帰省してテレワークを行っている方もいる事でしょう。テレワーク先が勤務地と同じ州内であれば特に問題はありませんが、仮に勤務地とは別の州の場合、その州に対してネクサスが発生する可能性があります。

前述の通り、ネクサスが無い納税者に対して州政府は課税を行う事が出来ませんが、いったんネクサスがあると認定された場合、州政府は該当する納税者に対して課税を行う事が可能となります。その為、従業員のテレワーク先によって租税判断基準の一つである「州内で従業員を雇用」に該当する事により、結果的にその州に対して何らかの納税義務を負う事に為りかねません。

このような租税および事務負担を予測して次の15州(イリノイ州、アイオワ州、インディアナ州、ケンタッキー州、メリーランド州、ミシガン州、ミネソタ州、モンタナ州、ニュージャージー州、ノースダコタ州、オハイオ州、ペンシルベニア州、バージニア州、ウエストバージニア州、ウィスコンシン州)は、コロナ禍におけるテレワーク勤務に対して納税者の居住地以外での課税を行わないとする協定を結びました。その他の州ではケースバイケースで対応する州もあるようですが、なかには現行の税法に則りアグレッシブに租税権利を敢行すると発表した州もあるようです。

他州への不必要な租税を回避するためにもテレワークを認めている会社は、各従業員のテレワーク先を確認するとともにテレワーク勤務に対する社内規定を早急に作ることをお勧めいたします。