申告に関する誤解

5月 2, 2024

所得税の申告を終えて一息ついている頃だと思われますが、今年は還付、追徴の何れの結果になったのでしょうか。今月は申告に関する誤解と来年度の対策について話をしたいと思います。

誤解その ①(提出は早ければ早い程良い)

申告をさっさと終え、還付金を早く受け取りたい気持ちは良く分かりますが、提出が早すぎる事でかえって受け取りが遅くなる事もありますのでご注意ください。申告に必要とされる税務書類は、各責任者に対して最終提出期日を設けています。給与明細を報告する W-2、利息や配当を報告する 1099 は毎年1月31日、株取引による譲渡益を報告する 1099-B は2月15日、パートナーシップからの利益分配報告書 Schedule K-1 は3月15日とそれぞれ作成期日が異なります。また、いったん書類が届いた後に、後日処理エラーが原因で修正版が届く事も良く起こります。つまり、必要な税務書類が全て完全な形で揃うまで時間がかかりますので、その点を良く理解したうえで申告の準備に取り掛かる事が望ましいでしょう。

誤解その ②(還付は良い)

還付のあった読者の皆様、おめでとうございます。追加で納付が発生するよりも還付がある方が気分が良いの分かりますが、還付額しだいでは無条件に両手を挙げて喜んでもいられません。還付があるという事は、裏を返せば必要以上に税金を多く支払った事になります。IRSは過払い税額に対し利息を支払いませんので、簡単に言えば金利ゼロの預金に貯蓄を行っていたも同然なのです。還付額が数百ドル程度であれば良いのですが、金額が数千ドル以上にもなると資金を運用する機会を失った結果になりますので、源泉額を見直す事が望ましいでしょう。見直す事によって確保できた資金で利息を得たり、または高利のクレジットカード残高を減らす方が、よっぽど賢明な資金計画と言えるでしょう。身近に還付額の多さを自慢げに話す方がいれば、同じアドバイスを行って、誤解を解いてあげて下さい。

誤解その ③(還付の確認方法)

還付金がなかなか指定の口座に振り込まれずにイライラされた経験を皆一度された事があると思われます。申告書を作成した税理士または専門家などに問い合わせれば、還付手続きの状況を確認できるを思われがちですが、実はその理解は全くの誤りで、専門家も確認する事が出来ません。

還付処理にかかる日数は申告方法によって異なり、通常電子申告で72時間以内、紙で約4週間以内に還付の手続きが行われます。還付手続きの状況確認は、IRSの自動音声通話番号 (800) 829-1954 に電話をかけて確認する事が出来ますが、その他の手段としてオンラインのサイト 、または専用のアプリ IRS2Goto を利用する事をお勧めします。

誤解その ④(追徴は良くない)

結果的に追徴となった方には理解し難いかもしれませんが、支払い不足による罰則金が発生していなければ実は適度の税金を納めたと言っても過言ではありません。必要以上に税金を徴収されず、また過小納付による罰則金も支払う必要も無いため、理論的では資産を上手く運用する機会を得たと言えるでしょう。税金の追徴と共に罰則金または利息が加算された場合、無駄な出費が発生する事になりますので、納付額を調整し何らかの対策を講じる必要があるでしょう。

通常、税金の支払い不足が発生した場合には不足分に対して罰則として利子が加算されますが、納付額が次の何れかの場合には罰則金は発生しません。また、罰則金の例外として追徴額が $1,000 以下の場合、または前年度に居住者として申告し、かつ税金を支払う必要が無かった場合には、源泉徴収額に関係なく支払い不足による罰則金は発生いたしません。

[ 罰則金回避の条件 ]

  1. 今年度の納税額の90%以上を納めている場合、または
  2. 昨年度の納税額以上を納めている場合(高額所得者は、昨年の納税額の110%以上)

誤解その ⑤(お金を稼いでいる方に支払い義務がある)

夫婦合算申告を行った場合、税金の納付はもちろん支払い不足に対する追徴税、利子や罰則金などは連帯責任となります。その為、夫婦それぞれの収入額に関係なく両者が同等に納付義務を負う事になります。また何らかの理由により、申告後に離婚をしても離婚調停の内容に関係なく両者が支払い義務を負う事になります。厄介なのが、夫婦の何れが幾ら納付を負うという規定を設けていないため、IRSは支払い能力のある納税者に納付を催促します。またIRSがその気になれば納税者の銀行口座から不足分を直接徴収できる権利を持っているため、ある日突然自分の銀行口座から税金が差し引かれる事も起こりえますのでご注意ください。

来年度の対策

源泉税額の変更

所得税の過払い、または不足を回避する対策としてまず挙げられるのが源泉税額の変更でしょう。所得税の申告後に多額の還付金を受け取った方は、月々の給与から過度に税金が源泉徴収されていた事になります。逆に追加で税金が発生した方は、適度な税金が源泉徴収されなかった事が原因となります。その為、来年度の対策として源泉徴収額を見直す事をお勧めします。源泉額は 様式 W-4 を雇用主に提出する事で簡単に変更が行えます。各個人の事情によって異なりますが、お金の管理に自信の無い方は故意に税金を多く納め、浪費を抑える対策と取られても良いでしょう。

予定納税を行う

源泉税額の変更以外の対策として予定納税(様式 1040ES)を行う事も考えられます。予定納税の納付は、当該年度の予想税額を均等に4分割し、それぞれ納付期日(4月15日、6月15日、9月15日、翌年の1月15日)に収める必要があります。また最終的に還付となった場合でも、各四半期ごとに適度な税額を納めていない場合には、過小納付による利子が発生することもありますので注意が必要です。一般的に、給与額が固定されているサラリーマンは源泉税額の変更を行う事で納付額を調整しますが、自営業者の場合、毎年収益が変動するため予定納税で納付額を調整される方が多いようです。

税金の分割払い

金銭的理由により税金の納付が困難な場合には、様式 9465 を提出する事により税金の分割払いを行う事が認められています。ただし、納付スケジュールどおりに支払いが行われなかった場合、未納と見なされ過小納付に対する罰則金や延滞利子は加算されますのでご注意ください。

あとがき

一般的な納税者は年収の約4ヶ月分を税金として納めていると言われている事から申告期日は Tax Freedom Day とも呼ばれています。つまり毎年4月15日までは政府のために働き、4月15日以降は自分の為に働くと言う訳です。今年度も納税者としての義務を果たした読者の皆様、本当にお疲れ様でした。残りの8ヶ月は自分や家族の為にお互い頑張りましょう。