社会保障協定の歴史と概要
社会保障協定の概念は、国境を越えた人的交流が盛んな西欧では比較的古くから存在していましたが、米国では近年まであまり重要視されずにいました。日本にとっても日米間で結ばれた社会保障協定はイギリス、ドイツ、韓国に次ぐ四番目の協定となっています。日米社会保障協定が結ばれる以前は、日本および米国の両国で社会保険税を支払う義務が生じたため、派遣企業にとっては保険料の二重払いとなり、頭の痛い問題となっていました。日米社会保障協定はこの問題を解決すべく、どちらか一方の国で社会保険税を納付する事を目的に合意され、2005年10月1日から施行されました。
日米社会保障協定の全容はこちら(和文 ・ 英文)
日米社会保障協定の目的
日米社会保障協定は大きく分けて以下の三つの目的を遂行するために日米間政府にて合意に至りました。
- 公的年金の二重加入防止
- 高齢医療保険の二重加入防止
- 年金受給資格の加入期間を日米間で通算する事
適用資格
日米社会保障協定の適用を受けるためには以下の申請の際、以下の4条件を満たす必要があります。
- 日本で社会保険税を納付している事
- 日本在住の企業に雇用されている事
- 米国での勤務が5年以内である事
- 米国赴任前に最低6ヶ月間日本での勤務実績がある事
派遣期間が5年を超える場合
派遣時点で駐在期間が5年を超える場合には、社会保障協定の適用を受ける事が出来ず、米国で社会保険税を納付する義務が生じます。その際、日本では社会保険の加入者ではなくなるため、保険料の支払いはいったん停止されます。またこの場合、日本で社会保険の加入者でなくなるという手続きを取る必要はありますが、米国で特に書類や通達をする必要はありません。また基本的に社会保険税は一方の国で納める必要があるため、日米両国で納付することは認められておりませんが、国民年金は任意加入制度であるため引続き日本で納付することが可能です。
5年以下の場合 | 5年以上の場合 |
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適用証明書
実際に米国で社会保険税納付の免除措置を受けるためには、日本の社会保険制度に加入している事を証明する「適用証明書」を日本の年金事務所から受け取る必要があります。適用証明書の有効期限は5年間で、米国歳入庁 (IRS) へ提出する必要はありませんが、提出を求められる場合がありますので大切に保管ください。
日米社会保障協定の適用範囲
社会保障協定は社会保険税に関して日米両政府間で結ばれた条約のため、社会保険税の免税措置を受けることは出来ますが、連邦雇用保険税(FUTA)や州雇用保険税(SUTA)への効力を持っていないため、引続き米国で納付する必要があります。
米国市民・永住権保有者の扱い
日米社会保障協定の取り扱いは、国籍・永住権の有無に関係なく「一時派遣規定」に基づいて決定されるので、米国市民または永住権保有者(グリーンカード保持者)であっても適用資格を満たせば、日米社会保障協定の適用を受けられます。
再派遣・再赴任に際する取り扱い
規定上、帰任後少なくとも最低6ヶ月してからの再派遣であれば新たな派遣として追加5年間の例外規定適用を受けることも出来ます。また特別な理由がある場合には、6ヶ月以内での再派遣に対しても状況を審査して適用を受けることも可能です。