先月はオバマケアの罰則金について触れましたが、今月は新聞記事で見かけたオバマケアによる興味深い影響や導入に対する様々な反応を紹介したいと思います。
ご存知の通りオバマケアは“Shared Responsibility” と法令にうたわれているように医療保険改革導入による財源負担を連邦政府、州政府、保険業者、医療関係業者、事業主と個人に対して共同負担を義務付けています。
個人負担に対する影響と反応
個人に対しては投資所得税の新設、医療保険税の追加課税、医療費控除限度率の引き下げと先月紹介しました無保険者に対する罰則金という形で負担を強いられていますが、自分は蚊帳の外とばかり思っていた人々が意外な形で影響を受けているようです。
- 保険の打ち切り
オバマケアは該当する人々全員に医療保険の加入を義務付ける医療制度ですので、既に医療保険を持っている方は特に影響が少ないと思われていましたが、導入に際し一方的に保険会社から保険の打ち切り勧告や通達を受けて困惑した人がいるようです。あまり詳細は伝えられていませんが、オバマケアは単に医療保険に加入するという制度ではなく「政府が設定した最低基準」の医療保険へ加入する必要があると定められています。そのためその基準を満たしていない保険は罰則の対象となるため、止むを得なく保険会社は保険の打ち切りに踏み出し、保険に加入していた人達にとっては思わぬ痛手となったようです。
- 若年層の加入率
ご存知のように該当者は年齢に関係なく医療保険に加入する必要があります。まだ家族の一員として暮らす子供や学生などは、親または親族などの扶養家族として保険に加入する事になりますが、経済的に自立している若者は会社を介して、または個人で保険に加入する事になります。一般的に若者は年配の方に比べ健康であるため、病気にかかることや病院に行く頻度が少なく、それゆえ医療保険に加入する意義と必要性に対する意識が低く、また無保険に対する罰則金が実際に発生するであろう保険料に比べ低い事から未加入を選択する人がいるようです。
事業主に対する影響と反応
事業主に対しては50人以上の従業員を雇用する場合、全ての従業員に会社から医療保険を提供するか、または保険を提供しない事に対する罰則金を支払うという形で負担を強いられます。ただし事業主に対する罰則規定の適用は2年延期され、現在のところ実施は2016年からとなっています。
- 労働時間の短縮
オバマケアによる従業員の定義は、通常の週40時間勤務ではなく「週30時間以上勤務をする者」と定められているため、各従業員の労働時間を短縮したりまたは解雇する事で会社の金銭的負担を回避する動きを始めた事業主が出てきているようです。その結果、事業を効率的に廻す事ができなくなったり従業員の所得が減るなど経済への悪影響が懸念されているようです。
- 消費者への負担請求
導入に踏み切り従業員に対して医療保険の提供を始めた事業主もいるようですが、追加経費分を自己努力だけでは補えないため、オバマケア(正式名称The Patient Protection and Affordable Care Act)の頭文字をとり“ACA Surcharge” という形で消費者に一部負担を強いている飲食業者も出てきているようです。
- 政府を告訴
オバマケアが2010年に法令化された時点で、個人また事業主に対する罰則規定の実施年度は2014年と決められていましたが、事業主に対する実施年度は1年2年と順延され最終的には2016年開始となりました。この決定に対しもともとの開始年度である2014年導入を目指した事業主は、多大な費用を負担する結果となり不利益な扱いを受けたと連邦政府を相手取り告訴を起した事業主もいるようです。
何れにせよ主な規定が今年から導入されたばかりですのでオバマケアに関するニュースや政府の対応にはまだまだ目が離せそうにありません。