トヨタ北米本社移転の発表から早2ヶ月が経ちますが、巷では未だに経済効果の話でとても盛り上がっているようです。移転の理由はいろいろ考えられますが、節税対策が一つの要因になったのは言うまでもありません。今月は、駐在員などを派遣している企業が利用できる税制について話をしたいと思います。
社会保障協定の概要
社会保障協定の概念は、国境を越えた交流が盛んな西欧では比較的古くから存在していましたが、米国では近年まであまり重要視されずにいました。日米社会保障協定が結ばれる以前は、日本および米国の両国で社会保険税(俗に言うFICA税)を支払う義務が生じたため、駐在員を派遣する企業にとっては税金の二重払いとなり、頭の痛い問題となっていました。日米社会保障協定はこの問題を解決すべく、どちらか一方の国で社会保険税を納付する事を目的に合意され、2005年10月1日から施行されました。
日米社会保障協定の目的
日米社会保障協定は大きく別けて次の三つの目的を遂行するために日米間政府にて合意に至りました。
- 公的年金の二重加入防止
- 高齢医療保険の二重加入防止
- 年金受給資格の加入期間を日米間で通算する事
適用資格
日米社会保障協定の適用を受けるためには申請の際、次の4条件を満たす必要があります。
- 日本在住の企業に雇用されている事
- 日本で社会保険税を納付している事
- 米国での勤務が5年以内である事
- 米国赴任前に最低6ヶ月間日本での勤務実績がある事
派遣期間が5年を超える場合
派遣時点で駐在期間が5年を超える場合には、社会保障協定の適用を受ける事が出来ないため、米国で社会保険税を納付する義務が生じます。また社会保険税は一方の国で納める必要があるため、日本での納税はいったん停止されます。その際、日本で社会保険の加入者でなくなるという手続きを取る必要はありますが、米国で特に書類や当局へ通達をする必要はありません。
5年以下の場合 | 5年以上の場合 |
|
|
適用証明書
実際に米国で社会保険税納付の免除措置を受けるためには、日本の社会保険制度に加入している事を証明する「適用証明書」を日本の年金事務所から受け取る必要があります。受取った証明書をIRSに提出する必要はありませんが、提示を求められる場合がありますので大切に保管するよう心がけて下さい。
日米社会保障協定の適用範囲
社会保障協定は社会保険税に関して日米両政府間で結ばれた条約のため、社会保険税の免税措置を受けることは出来ますが、連邦雇用保険税(FUTA)や州雇用保険税(SUTA)への効用がないため、これらの税金は引続き米国で納付する必要があります。
米国市民・永住権保有者の扱い
日米社会保障協定の取り扱いは、国籍・永住権の有無に関係なく「一時派遣規定」に基づいて決定されるので、米国市民または永住権保有者であっても適用資格を満たせば、日米社会保障協定の適用を受ける事が可能です。