トランプ大統領が選挙公約の一つに掲げていた税制改革。共和党と民主党の間で議論が繰り返されてきましたが、ここにきて一気に法案成立が現実味を帯びてきました。今月はここまでの経緯、現状および展望について話をしたいと思います。
税制改革の機運と現状
共和党代表候補のトランプ氏が去年の大統領選に勝利する事で「ねじれ国会」が解消される結果となり、共和党主導の政策を推し進める環境が整う事となりました。(下院議席435に対し共和党は241議席、民主党は194議席。上院議席100に対し共和党は52議席、民主党は46議席、無所属2議席。)
11月中旬に下院議会で可決された税制改革法案は、上院議会で審議され今月の2日に可決されましたが、下院議会と上院議会でそれぞれ可決された内容が異なるため、法案が直ぐに施行されることは無く、相違点に対し今後両議会で調整が行われ最終法案が審議される予定となっています。最終的にどのような妥協案で合意されるか分かりませんが、現時点で両議会で可決される可能性が高い法案の中から読者の皆様に影響が大きいと思われる事項の一部が次となります。
[ 施行の可能性が高い法案 ]
- 法人所得税税率の軽減
両議会共に法人所得税税率軽減には賛成しているため、高い確率で税率の見直しが行われるでしょう。ただし下院議会は現行の七段階の累進課税を四段階に変更する法案を提案しているのに対し、上院議会は現行の七段階を維持しつつ各税率を下げる法案を提案しています。
- 個人所得税標準控除額の増額
両議会共に標準控除額の増額で意見は一致していますが、増額される金額の面で若干の違いが見受けられます。2018年度の独身身分の標準控除額 $6,500に対し下院議会は $12,200 へ、上院議会は $12,000 への増額を提案しています。夫婦合算申告の場合、標準控除額 $13,000に対して下院議会は $24,400 へ、上院議会は $24,000 への増額を提案しています。世帯主の場合、標準控除額 $9,550に対して下院議会は $18,300 へ、上院議会は $18,000 への増額を提案しています。
- 個人所得税人的控除の撤廃
両議会共に家族一人当たりに与えられる人的控除額 $4,050 の撤廃を提案しているため、世帯数が多い納税者にとっては大きな影響を及ぼすのは否めません。
- 州税、地方税控除の延長
項目別控除で現在認められている控除のうち州個人所得税、売上税控除を撤廃し、住宅ローン利子、固定資産税控除に上限額を設ける法案が提案されています。寄付控除は引き続き認められ変更はありません。
- 児童税額控除
両議会共に児童税額控除 (Child Tax Credit) の増額を提案しており、下院議会は現行の $1,000 から $1,600 へ、上院議会は $2,000 への増額を提案しています。
- 相続税控除の上限増額
両議会共に相続税免除上限額を現行の $550 万ドルから2倍となる $1.100 万ドルへ増額を提案しています。また一部の議員は6年後に上限額の撤廃自体を唱えているため、最終的に施行される法案には留意する必要があります。
先述のとおり下院議会、上院議会共に法案の詳細に関してそれぞれ意見が食い違っている点が多々ありますが、両議会共に税制改革に対しては賛成しているため、今後両議会が相違点に対してどう可決、成立させられるかが焦点になってくるでしょう。