税制改革(その③:まとめ)

 

先月号に引き続き法人所得税に関する改正内容をプラス面とマイナス面両方を紹介し、税制改革の総括を行いたいと思います。

税率の軽減や減価償却費の上限増加など損益決算書に直接的な影響を及ぼす改正内容の他にプラス面として挙げられるのが、規定緩和による作業の簡素化などが挙げられるでしょう。

 
会計処理方法

会計処理方法は、大まかに分けて現金の収支に基づいて記帳を行う現金主義会計 (Cash Method) と現金の動きに関係無く経済的事実に基づいて記帳を行う発生主義会計 (Accrual Method) の二通りがあります。現金主義会計は実際の経済活動を反映した期間損益計算が行えないため、法人での採用は一般的には認められていません。ただし過去3年間の平均売上額が500万ドル以下の場合、法人でも現金主義会計を採用する事が認められていました。

税制改革により現金主義会計の採用条件である平均売上額が500万ドル以下から2,500万ドル以下へと緩和されました。そのため、2018年度から現金主義会計に変更可能となる法人も増えてくるでしょう。

 
棚卸資産と統一資本化ルール

前述の現金主義会計を採用する事で棚卸資産の記帳を現金の収支に基づいて行う事となります。そのため、棚卸資産の年末在庫確認作業を会計上行う必要も無くなります。また、棚卸資産を持つ製造業者にとって頭の痛い「統一資本化ルール」などの税務調整も自動的に免除されます。

税制改革前は統一資本化ルールの免除対象者が再販業者に限られていましたが、改正後は製造業者も免除対象となるため幅広く多くの方が恩恵を受ける事でしょう。

 
接待費

税制改革により多くの納税者が恩恵を受ける反面、逆に今まで活用していた税法が廃止されることによりマイナス効果が出てくるケースも幾つかあります。その代表として接待費が挙げられるでしょう。

改正前は接待費用の50%を損金算入する事が認められていましたが、改正後は接待費用の控除が一切認められません。ただし、スポーツ観戦やイベントの参加費、会員費など娯楽を目的とした接待費が変更の対象となるため、会食などの接待費は引き続き損金算入することが可能です。なお今回の接待費改正により、会社名義で購入されていた野球やバスケットボールなどのシーズン年間パス購入が減ると予想されています。

 
国内生産活動控除

主に国内の製造業また建設業が恩恵を受けていた国内生産活動控除が税制改正により撤廃されました。そのため、2018年以降の予算編成を行う際には国内生産活動控除を考慮しない予想を立てる必要があります。

 
あとがき

3ヵ月にわたり読者の皆様に影響を与えると思われる改正内容を中心に紹介をさせて頂きましたが、紙面で紹介できなかった内容もまだ沢山ありますので、今後も意識して変更内容にアンテナを張る事お勧めいたします。カレンダーイヤー以外の決算日(例えば3月など)を採用している法人は、同じ年度中に影響を受ける時期(変更後)と受けない時期(変更後)が混同しますのでより一層注意する事が必要でしょう。

個人所得税と法人所得税の改正内容で大きく異なる点は、今回の改正内容が個人所得税の場合2025年度までの期限限定である事に対し法人所得税は永久的な変更である事でしょう。

 

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