オンラインショッピング

 

オンライン小売業大手アマゾンで買い物をした際に売上税が徴収されていなかった頃を皆様覚えていらっしゃいますか。最終的にテキサス州政府と和解し、アマゾンが売上税の徴収を開始したのがちょうど6年前の2012年7月1日の事でした。オンラインショッピングは今や買い物の手段として主流となりましたが、付随する売上税の徴収および納税義務には制約があったため、各州政府と販売側でイタチごっこが繰り返されていました。それが先月21日に連邦最高裁判所が下した判断により、オンラインショッピングを取り巻く環境が大きく変わろうとしています。今月はオンラインショッピングと売上税ついて話をしたいと思います。

 
売上税の仕組み

ご存知のとおりアメリカでは国(連邦)レベルの売上税が存在せず、各州政府や地方自治体がそれぞれ独自の税制を導入しています。税率や課税範囲も各州によって異なりますが、基本的には有形資産が最終消費者に販売された時点で税金が発生する仕組みとなっています。また原則として税金の徴収および納付義務は販売側にあり、商品を販売する際に売上税を購入者から徴収する方法が取られています。

州政府はむやみやたらに課税を行えるのではなく、販売者に対してネクサス規定(事業関連性)に基づいた課税権を確立する必要があります。ネクサス規定は州によってそれぞれ異なりますが、原則として次の何れかの条件を満たすと、売上税の課税権が発生すると規定されています。

 
【 課税権の判断基準 】

  • その州で会社を登記している場合
  • その州内に物理的な建物(事務所、倉庫など)を所有している場合
  • その州内に従業員がいる場合
  • その州内に有形(在庫など)または無形資産を所有している場合
  • その州へ定期的に従業員を派遣している場合

 
法律の抜け穴

現行の売上税に対する課税権の判断基準は、まだインターネットが普及していなかった時代に出た判例が基準となっていたため、電子商取引などのインターネットを介するビジネスモデルに対応出来ていませんでした。その為、州政府はインターネット小売業者に対して課税権を確立できず、税収益を大きく取りこぼす形となっていました。

例えばテキサス州に従業員がおらず、事務所や倉庫などの建物も所有していない小売業者は、テキサス州での売り上げに対し売上税を徴収する義務も納税義務も発生しません。

 
最高裁判所の判断と今後の動向

税収益の損失を補填すべく各州政府が事業関連性の課税基準を見直したり課税範囲の拡大を試みていた矢先に出たのが今回の連邦最高裁判所の判断で、前述の判断基準の是非に関係なくある一定額の売上または取引数を上回っている場合、州政府は販売者に対して課税権を行使できるという内容でした。またこの判断は、過去の判例を覆す珍しい結果となっています。

各州政府にとっては追い風となる最高裁判所の判断ですが、今後どのように小規模の小売り業者またeBayなど消費者間取引 (Customer to Customer) 利用者に対して売上税の徴収プロセスを行うか課題も山積みです。その為、最高裁判所の判断が出たからといって直ぐに売上税の徴収が始まるとは想定し難いのですが、インターネットなどを利用して物を販売している方は特に今後の動向に注意を払うべきでしょう。

 

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