不動産(その③:賃貸収入の税務)

 

先月号では不動産購入時の注意事項について話をしましたが、今月は購入後の諸取り扱いについて税務の観点から検証したいと思います。不動産は居住目的、または投資目的として購入されるケースがありますが、ここでは投資目的として購入した不動産に対する税務処理について検証したいと思います。

 
源泉地は賃貸物件の所在地
所得の源泉地は納税者の居住地や役務提供地(就業地)で決まるのではなく、通常所得の種類によって決定されます。賃貸収入など投資物件から得られる不動産所得に対する税金の源泉地は不動産の所在地と規定されているため、アメリカ国内で不動産投資を行っている方は、アメリカに対して税金を納める必要があります。

 
課税方式
主に家賃など不動産から得られる所得に対して「グロス課税」と「ネット課税」2通りの課税方法があり、それぞれメリット、デメリットが異なります。

グロス課税(または源泉課税)とは、賃貸収入に対して30%の税金を納める事で納付手続きが完了する処理方法です。その為、所得税の申告を行う必要が無い反面、諸経費(管理費、固定資産税、修繕費、保険料、支払利子、減価償却費などの必要経費)を損金算入できないデメリットがあります。

ネット課税(または申告課税)とは、諸経費を差し引いた純利益に対して課税される処理方法です。諸経費を考慮しないグロス課税に比べ節税効果を得る事が可能となりますが、毎年申告を行う必要があり、ある一定額の税金が発生すると予想される場合には予定納税を納める必要もあります。また申告に必要な納税者番号(EIN または ITIN)の入手など付随する作業も多々発生します。

 
居住身分別課税方式
米国居住者の場合、ネット課税方式が自動的に適用されるため、家賃収入に対する税金は、給与などその他の所得と一緒に申告をする必要があります。

米国非居住者(個人、法人を含む)の場合、前述の2通りの課税方式を選択する事が認められていますが、選択を行わない場合にはグロス課税方式が自動的に適用されます。ネット課税を選択する場合、初年度の申告書に選択宣誓書を添付する事が義務付けられています。課税選択の猶予期間は初年度の申告期日から16ヵ月以内となっているため、提出を怠った場合には、期限内に提出する事で対応が可能です。

いったんネット課税の選択を行うと課税選択の取り消し手続きを行うまで選択された方式が継続的に適用されます。何らかの理由により課税選択を取り消した場合、ネット課税の選択は向こう5年間行うことが出来ませんので細心の注意を払う必要があります。

 
【課税方法の比較】

グロス課税 ネット課税
  課税対象 賃貸収入 純利益
  税率 30% 累進課税
  諸経費損金 不可 可能
  申告義務 無し 有り
  納税者番号取得 必要無し 必要
  課税選択 必要無し
(自動適用)
必要
(申告初年度に選択)

 

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