「テキサスは州税が無いから」。ここ最近よく耳にする言葉ですが、特に近年他州からテキサス州に移住してきた方が口にしているように伺えます。本当にテキサス州に移住する事で節税効果を得る事が出来ているのでしょうか。テキサス州の税法に関して誤った理解をされている方が多いように見受けられますので、今月はテキサス州の税金について検証をしたいと思います。
州による主な違い
ご存知のとおり米国では各州政府が会社法をはじめとするあらゆる法環境(雇用法、税法等)を独自に制定しています。州毎で異なる税金の代表として所得税、売上税、失業保険税などが挙げられます。また同じ州内であっても住んでいる地域毎に動産税や固定資産税など地方税も異なってきます。
- 所得税(Income Tax)
テキサス州と言えば、冒頭のコメントどおり「州レベルで所得税が無い州」として知られています。その為、給与やその他所得に対する課税は連邦のみとなるため、テキサス州に移住する事で節税効果を得る事が可能でしょう。現在、州レベルで所得税を設けていない州はテキサスの他にアラスカ、フロリダ、ネバダ、サウスダコタ、ワシントンとワイオミングの計7州となります。
- 売上税(Sales Tax)
一般的にテキサス州の売上税の税率は 8.25% と認知されていますが、実はこの税率は州税と地方税(市、郡、特別地区)を合計した税率となります。その為、同じテキサス州内であっても場所によって税率が異なる地域が存在します。近郊で言えば、テキサスレンジャーズやダラスカウボーイズの本拠地で知られるアーリントン市の売上税は 8.0%(州税率 6.25%、市税率 1.75%)となります。
地方税を含む州毎の税率平均値を比較すると、税率が一番低いのはアラスカ州で、一番高いのはテネシー州となります。ランク別で比較した場合、高い順番からカリフォルニア州は9位にランクされテキサス州は12位にランクされますので、カリフォルニア州からテキサス州に移住してきた方々は、同額の購入に対し節税効果を得る計算となります。50州の内、アラスカ、モンタナ、ニューハンプシャー、デラウエア、それとオレゴンの5州は州レベルで売上税を設けていません。
(2019年1月、非営利税制調査団体調べ)
ちなみにダラス市内の売上税率は 8.25%で、その内訳はテキサス州 6.25%、ダラス市 1.0%、それとダラス・メトロ 1.0%となります。ダラス・メトロの税収は、電車やバスの運営で知られるDARTの運営補佐を目的に施行された税法のため、DARTの電車やバスが運行する市内では徴収される税金となります。
- 固定資産税(Property Tax)
地方自治体の主な財源として売上税と固定資産税が挙げられます。固定資産税は、土地や建物などの不動産に課税される税金で課税対象項目や税率は、管轄している各郡 (County) によりそれぞれ異なります。
固定資産税は州ではなく郡レベルで管理されているため州別での比較は行えませんが、固定資産税率を主な都市別で比較すると、ロサンゼルス郡の 0.793% に対しダラス郡の税率は 2.431% と少々高めに設定されています。ただし固定資産税額は、査定額から控除後の金額に税率を掛けて算出されますので、一概に税率だけで判断を行うのは難しいでしょう。一般的にカリフォルニア州の不動産の査定額はテキサス州に比べ倍以上ありますので、金額に限定して比較を行った場合、税率は高いが査定額の低いテキサス州の税金が結果的に低いケースがあるでしょう。
固定資産税額=( 評価額 – 控除 ) ✕ 税率
前述のとおり、各州政府は独自に税制を設けており、いろいろな形で税源を確保しています。その為、一つの税金のみに着目して判断を行う事はあまり望ましくありません。
所得税を設けていない州は、それにとって代わる他の形で州財源を確保しています。アラスカ州は石油関連の税金から税源を確保し、フロリダ州は売上税と固定資産税、ネバダ州は説明するまでもなくギャンブル関連の税金からそれぞれ財源を確保しています。テキサス州は所得税を設けていない代わりに州財源を主に売上税と固定資産税から調達しています。