「テキサスは州税が無いから」。先月は個人の観点からテキサス州の税金について検証を行いましたので、今月は法人の観点から検証を行いたいと思います。
法人に対する課税
テキサス州では個人所得税同様、法人に対しても所得税が設けられていません。ただし、州内での営業許可の一環として代わりにフランチャイズ税の申告を義務付けています。テキサス州で設立された法人またはネクサスがあると認定された法人が対象となり、毎年5月15日に申告を行う必要があります。
ネクサスとは
ネクサス (Nexus) は、日本語に直訳すると「つながり、結び付き」と和訳されますが、実際には該当する事業活動に対し課税に値する活動 (Nexus) を意味する用語として認識されています。通常、法人を設立した州に関係なく事業活動を行っている州でネクサスがあると認定された場合、州政府はその法人に対して課税権を有する事になりますので、該当する法人はその当該州に対して何らかの申告を行い税金を納める義務が発生します。ネクサスの規定は各州によって多少異なりますが、テキサス州では主に次の事業活動が判断材料として挙げられます。
テキサス州内で宣伝・広告、委託販売、契約業務、雇用または契約社員、在庫などの資産、事務所、サービスの提供、商品の設置または修理、トレーニングやセミナー、カスタマーサービスなどを行っているか。自社の事業活動内容が、課税の対象となるか独自で判断をする事が難しい場合には、テキサス州発行のネクサス・アンケート用紙 (様式 AP-114) の質問に答え、回答用紙を提出する事で州政府の意見を仰ぐ事ができます。
フランチャイズ税とは
フランチャイズ税は、グロスマージンと呼ばれる粗利益に対し、按分率および税率を乗じて算出されます。グロスマージンの計算方法は四通りあり、そのうち金額の一番低いグロスマージンが計算式に採用されます。税率は業種により異なり、小売・卸売業種は 0.375% で、その他の業種は 0.75% となります。
フランチャイズ税 = グロスマージン ✕ 按分率 ✕ 税率
[ グロスマージン ]
- 総収入の70%、または
- 総収入から売上原価を差し引いた金額、または
- 総収入から人件費を差し引いた金額、または
- 総収入から100万ドルを差し引いた金額
一般的な税金の算出方法と大きく異なる点は、税率を掛ける対象が販管費用を含めた「純利益」ではなく販管費用をほぼ無視した「粗利益」である点でしょう。その為、赤字決算の場合、他州では税金が発生しないケースでもテキサス州では税金が発生する可能性があります。
前述のとおり、一般的な法人所得税と課税方法が全く異なるため一概に単純比較は行えませんが、優遇税制が多々設けられているため、業種や売り上げの規模により有利に働くケースがある反面、赤字決算の年でも税金が発生するデメリットもありますので注意をする必要があります。
冒頭のコメントのとおり、確かにテキサス州は法人に対して「州レベルの所得税」はありませんが、代わりに「フランチャイズ税」を課税します。つまりテキサスは「州税が無い州」ではなく「州税を違う形で徴収する州」として捉える方が正しいでしょう。
[ フランチャイズ税の特徴 ]
- 税制がシンプルで税率も低い(小売・卸売業の税率は 0.375%、その他の業種の税率は 0.75%)
- 総収入が$1,130,000 以下の場合非課税扱い(ただし申告をする必要はある)
- 税額が $1,000 以下の場合、納付する必要が無い(免税)
- 最低課税額また予定納税制度を導入していない
- 累積赤字の概念が無いため、年度別の課税所得同士を相殺する事が出来ない
- 税金は経常利益 (Net Income) ではなく粗利益 (Gross Margin) に対して税率をかけ算出される
- 粗利益に対して課税されるため赤字決算の場合でも税金が発生する場合がある
- 申告期日は会計年度に関係なく毎年5月15日