テキサス州税制改革

 

今年度のテキサス州議会で私達の生活に影響を及ぼす重要事項が議論されましたので、今月は税金の面に焦点を置いて議会の動きについて紹介をしたいと思います。

 
第86回テキサス州議会

来年度の予算編成のため、第86回テキサス州議会が140日間の日程で1月8日から5月27日まで開催されました。主な協議内容は、医療費と教育費を中心とした予算組みの話し合いが行れ、特にその中で税制面で注目を集めた議題がグレッグ・アボット州知事が推進する固定資産税と売上税の税制改革でした。

 
固定資産税を取り巻く状況

年々上昇し続ける固定資産税に歯止めをかけるべくアボット州知事は、固定資産税の税率上昇率に上限を設ける必要性を数年前から訴え続けていました。

ご存知のとおり、固定資産税および動産税を含めた Property Tax (または Ad Valorem と呼ばれる) は、州政府ではなく各管轄の郡 (County) によって管理され主に公立学校、公共施設、公共交通や治安管理などの公共サービスの重要な財源として位置付けられています。近年の急激な人口増加に伴いこれら公共サービスの必要性は年々高まり、それに並行して固定資産税および動産税も過去に例を見ないスピードで上昇しているのを皆さん実感されている事でしょう。その為、税率の上昇率に上限を設ける事で将来的な上昇率の減速を図るべく今議会の議題として取り上げられる事となりました。

 
固定資産税の税制改革

年利上昇率の上限を 3.5% (アボット州知事は当初 2.5% を推進)と規定した上院法案第2(正式名称 Texas Property Tax Reform and Transparency Act of 2019)は上院議会投票で21対9で、下院議会投票では88対50でそれぞれ可決され、現時点でアボット州知事の署名待ちとなっています。もともと上昇率の上限を 2.5% とする政治活動を推進していたのがアボット州知事本人であるため、可決された法案が近日中に署名される事は確実視されており、署名が行われた場合来年度から法律として施行される事になります。上院法案第2は、上昇率の上限を制定する事項の他に不動産所有者に対する免税ルール通知手段の改善や税務書類の透明性の向上を義務付ける条項も盛り込んでいます。

今後同法案が法律として施行されると各地方自治体は年利上昇率 3.5% を超える予算を組む場合、投票などで所轄の住民から同意を得る必要があります。現行の年利上昇率の上限は8% となっているため、各地方自治体にとっては財源の面で大きな痛手となる事は否めません。(ここで言う上昇率の上限は固定資産税率を指し、不動産物件評価額上昇率とは異なりますので注意ください。不動産物件評価額の上昇率の上限は、テキサス州税法第23.23項(a) により10%と定められています。)

 
売上税の税制改革

上院法案第2が可決された事で財源を失う可能性がある各地方自治体(主に市や郡)などがこれに強く反発したのは言うまでもありません。固定
資産税税制改革推進派は、税収減の代替案として俗に「売上税交換案」と呼ばれる下院共同決議案第3 (Texas House Joint Resolution 3) を議会に提出しました。

同案件の内容は、現行の売上税の税率を1% 上げそこから得る増収分を地方自治体に還元するという内容でしたが、売上税は貧富の差に関係無く全てのテキサス住民に対して徴収されるため、より一層貧富の差を助長するとの理由により今議会の議題から外される結果となりました。

だたし、今後上院法案第2が法律化される事が確実視されており、そのに伴い地方自治体の税収が減る事が予想されるため、来年以降の議会の議題として再び取り上げられる事は間違いないでしょう。その為、将来テキサス州の売上税が現行の8.25%から9.25% に引き上げられる日が来る可能性がありますので、今後も議会の動向に注目しその内容を皆様にお伝えしようと思います。

 

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