先月は、固定資産税額を抑える手段として税額算出のベースとなる査定額の規定および不服申し立てについて紹介しました。今月は固定資産税額を軽減できる他の方法について話をしたいと思います。
固定資産税を取り巻く現状
固定資産税および動産税を含む Property Tax (またはAd Valoremと呼ばれる) は、州政府ではなく各管轄の郡 (County) によって管理され主に公立学校、公共施設、公共交通や治安管理などの公共事業の重要な財源として位置付けられています。近年テキサス州への人口流入に伴い公共事業の必要性は年々高まり、それに比例して州政府を含めた地方自治体の財源確保も重要な課題となっています。先月号でも触れましたが、固定資産税額を左右する要素は査定額、控除額と税率の三つで、税額は不動産査定額から控除額を差し引いたネット査定額に税率を掛けて算出されます。次の方程式からも分かるように査定額と税率は低く、控除額が高ければ固定資産税額を低く抑える事が出来ます。
固定資産税額 = ( 査定額 – 控除額 ) ✕ 税率
固定資産税控除
固定資産税額を左右する査定額は、管轄の査定審査委員会 (Appraisal Review Board) と査定額の適正性を協議する事で減額する事が可能です。固定資産税額を左右するもう一つの要素である控除額は、条件を満たす所有者に対して付与され、次が主な控除項目となります。
【主な固定資産税控除】
- ホームステッド控除(テキサス州税法第 11.13(b) 項)
- 高齢者控除(テキサス州税法第 11.13(c) 項)
- 障害者控除(テキサス州税法第 11.13(d) 項)
- 遺族控除(テキサス州税法第 11.13(q) 項)
- 負傷退役軍人控除(テキサス州税法第 11.22 項)
- 戦没者遺族控除(テキサス州税法第 11.133 項)
前述の控除の内、最も活用されているのがホームステッド控除で、所有している不動産を自身の居住用として使用している事が条件となります。その為、居住以外の目的で所有している不動産(別荘や賃貸物件など)に対しては適用されません。次に多く活用されている控除が高齢者控除で、65歳以上の不動産所有者に適用されます。
控除額は適用される控除項目によってそれぞれ異なり、ホームステッド控除は $25,000、高齢者控除は $10,000、負傷退役軍人および戦没者遺族控除は査定額満額が控除されます。条件を満たす場合、複数の控除を併用する事が認められているため、不動産を所有している方が居住目的で所有し且つ65歳以上の場合、合計 $35,000 の控除を得る事が出来ます。ただし、高齢者控除と障害者控除の併用は認められていないため、該当する方は何れか節税効果が大きい方を選択する事が出来ます。
選挙結果の恩恵
年々上昇し続ける固定資産税の抑制を目的に去る5月7日に実施されたテキサス州地方選挙で固定資産税に関わる二つの法案の是非が問われました。投票の結果、圧倒的賛成多数で修正法案が支持され、次が修正案の内容となります。
修正法案①(賛成86.91%、反対13.09%)
同修正法案は、高齢者および障害者が対象となり、最も税額の負担が大きい学校区の税率を軽減する内容となっており、修正法案の適用開始は2023年1月1日と制定されています。また同法案の施行によって税収減となる地方自治体に対して州政府が同額を補填する事も保証されているようです。
修正税制②(賛成84.89%、反対15.11%)
同修正法案は、ホームステッド控除に関わる改正案で控除額を現行の $25,000 から $40,000 に増額する法案でした。対象者が限定されている修正法案①とは異なり、ホームステッド控除の条件を満たす全ての所有者が対象となります。また修正法案の適用開始日が2022年1月1日となっているため、早速今年度の納付から恩恵を受ける事が出来ます。
今後の動向
今回の修正法案は、州政府が減収分を補填する内容が法案に盛り込まれていますが、結果的に地方自治体が直接納税者から得られる税収入の減少となるため、公共事業の低下が懸念されています。また近年の不動産ブームに押し上げられる形で上昇し続ける査定額に対し同法案の効果が薄いと批判されているため、2023年1月に開催予定の第88回テキサス州議会までに抜本的な税制改革案の準備が進められています。テキサス州政府も固定資産税が地域住民の負担となっている事を理解しているようなので、来年の議会で協議される緩和策に期待したいと思います。