EV税

数年前に注意を喚起した電気自動車に対する租税がいよいよテキサス州でも開始されます。今月は、租税の背景と今年の9月から開始されるEV税について話をしたいと思います。

ガソリン税の歴史

連邦道路管理局の記録によるとガソリン税は1919年にコロラド州、ニューメキシコ州、ノースダコタ州とオレゴン州の4州で導入されたのが始まりのようです。その後ガソリン税は他州へも浸透し10年後にはほぼ全ての州で同様の税法が施行されていたようです。連邦政府がガソリン税を導入したのは1932年で当時は1ガロン当たり1セントを徴収していたようです。

テキサス州のガソリン税

私達が日頃からライフラインとして日々利用している道路の補修や整備などは、ガソリン税を主な財源として成り立っています。テキサス州では税収の3/4を道路補修事業、残りの1/4を教育費として活用しており、2022年度のガソリン税の収益は37.8億ドルで、州で6番目(全体の約4.9%)に多い財源となります。(テキサス州財源データ)公共交通機関が充実していないテキサス州では他の州に比べ車への依存度が高く、必然的に道路を利用する頻度が高いと言えるでしょう。

テキサス州政府の情報によると同州で車両登録が開始されたのが1917年で、当時すでに19万台の乗用車と5千台のトラックが走っていたそうです。ガソリン税はテキサス州で1923年に課税が開始され、1ガロン当たり1セントから1927年に3セント、1929年に4セントへと増税されました。

1931年当時のテキサス州ではガソリンを「自動車に動力を供給できる原料」と定義していたようですが、1941年にガソリン、ディーゼルと液体ガスの3種類に区分し、それぞれ1ガロン当たり4セント、8セント、4セントを課税するようになったようです。その後、数回税率を変更をした後1984年から一律の税率を採用するようになったようです。現在テキサス州ではガソリンおよびディーゼルの税率は1ガロン当たり20セントとなっています。

ガソリン税は全ての消費に対して課税されるのではなく、連邦政府またテキサス州内の公立学校で使用される車両やスクールバスなどはガソリン税の対象外となります。また道路以外で使用する機器(モーターボート、芝刈り機、農作業器具)に対する消費も課税対象外となっています。

租税の背景

今回のEV税が法制化された主な要因として車社会の環境変化が挙げられるでしょう。温暖化現象の原因となっている温室効果ガスの削減目標を達成するために太陽光や風力などの再生可能エネルギーへの移行が加速し、その結果電気自動車が急速に普及しているのは周知の事だと思われます。電気自動車が普及するにつれガソリンへの依存度が減り、ガソリン消費が落ちる事で結果的にガソリン税収も減ってしまいます。また技術発展によりハイブリッド車などの燃費が向上するなどガソリン依存度の減少に更に拍車がかかってきています。

年々減っていく税収を補填するために各州政府は仕方なくガソリン税を上げざる終えない状況に至っていましたが、増税のみでは十分な財源を確保できないため、電気自動車に対して新たな租税を試みる動きが活発化しています。

EV

電気自動車も普通のガソリン車と同様に道路を走行する事で路面を損傷しますが、現行の法律では道路の補修費用を徴収する事が出来ません。その為、今年開催された第88回テキサス州議会(1月10日から5月29日開催)で電気自動車に対する租税(上院法案第505)が議論され、アボット州知事の署名によってEV税が成立しました。

今回成立したEV税は、電気自動車に対して現行の車両登録費に追加で初回 $400 を徴収し、その後更新費として毎年 $200 が徴収される仕組みとなり、今年の9月1日から施行が開始されます。他州でも同様なEV税が導入されていますが、テキサス州の運転手一人当たりのガソリン税負担額が年間約 $100前後 (テキサス運輸省調査)のため、一部の専門家から今回法制化されたEV税は電気自動車オーナーに対して不利益であると非難されています。

消費量に対して課税が行われるガソリン税と公平性を保つために電気自動車の走行距離に対して課税を行う案も出ていたようですが、最終的には固定額を車両登録費として課税する法案が可決されました。また今回のEV税は、ハイブリッド車、電気自動二輪、電動機付き自転車、電気カートには適用されません。車両価格、充電ステーションの設置を含め電気自動車普及のハードルはまだ高いと言えるでしょう。

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