テキサス州には税金が無い。他州からテキサス州に移住された方、またテキサス州内に会社を移転された方が良く口にする言葉ですが、実際には語弊がある表現となります。その為、今月はテキサス州フランチャイズ税の概要について話をしたいと思います。
フランチャイズ税
確かにテキサス州は法人に対して所得税を課税していませんが、同州内での営業許可の一環として代わりにフランチャイズ税の申告を義務付けています。テキサス州法によって設立された法人、またはテキサス州内で事業活動を行っていると見なされた法人がフランチャイズ税の対象となります。
事業活動の有無は、その活動内容、頻度、性質によって判断され、具体的な判断材料としてテキサス州内で宣伝や広告活動、委託販売、契約業務、従業員または契約社員を有する、在庫などの資産を保有、事務所を構える、サービスを提供、商品の設置または修理、トレーニングやセミナーを行う、カスタマーサービスを行う、または Economic Nexus に該当する場合、テキサス州で事業活動を行っていると判断されます。(テキサス州行政法 3.586)
前述の事業活動定義の一つとして挙げた Economic Nexus は、連邦最高裁判所で争われたWayfair訴訟の判例を参考に導入された規定で2020年1月1日から施行が開始されました。他の規定と大きく異なる点は、事業活動の判断を売上額のみで行い、その他の活動内容を全く考慮しない点と言えるでしょう。現行の Economic Nexus 規定は、物理的な事業関連性の有無に関わらずテキサス州から得た年間売上額が 50万ドルを超える場合、テキサス州に対して事業関連性があると認定されます。
自社の事業活動内容が、課税の対象となるか独自で判断する事が難しい場合には、テキサス州のネクサス・アンケート用紙 (様式 AP-114) の質問に答え、回答を提出する事で州政府の意見を仰ぐ事ができます。
税額計算の概要
州課税所得を計算する上で一般的に採用されている按分計算は、主に売上、資産、そして人件費の三要素を含めた算出方法が主流ですが、テキサス州フランチャイズ税は、按分計算に売上のみしか考慮しません。そのためテキサス州の課税所得計算には、総収入 (Everywhere Gross Receipts) に対するテキサス州の収入 (Texas Gross Receipts) の比率が用いられます。この比率を一般的に按分率 (Apportionment Rate) と呼びます。例えば、総収入100万ドルに対しテキサス州の収入(州に帰属する収入)が25万ドルと仮定した場合、課税対象所得計算に用いられる按分率は25% (25万ドル ÷ 100万ドル) となります。
按分率 = テキサス州収入 ÷ 総収入
フランチャイズ税は、グロスマージンと呼ばれる粗利益に対し、前述の按分率と税率を乗じて算出されます。グロスマージンの計算方法は四通りあり、そのうち金額の一番低いグロスマージンが計算式に採用されます。税率は業種により異なり、小売・卸売業種は 0.375% で、その他の業種は 0.75% となります。
フランチャイズ税 = グロスマージン ✕ 按分率 ✕ 税率
その他の特徴
パススルーに対する課税
パススルー法人に対する課税は通常株主、メンバーまたはパートナーに対して行われますが、フランチャイズ税はパススルー法人に対して直接課税を行います。
非課税対象値
年間の総収入額が非課税対象値以下の場合、無条件でフランチャイズ税が免除されます。非課税対象値は毎年偶数年度に見直しが行われ、現行の非課税対象値は 123万ドル(2022年、2023年申告分)のため、総収入額がその額を下回る場合、フランチャイズ税が免除されます。ただし、自動的に免除措置を受ける事が出来ないため、No Tax Due Report(様式 05-163)を提出する必要があります。
繰越欠損金
フランチャイズ税は、粗利益 (Gross Margin) に対して課税され、純損失を考慮しません。その為、繰越欠損金の概念は適用しません。
予定納税
テキサス州は予定納税制度を導入しておらず、各四半期ごとの税金の計算をする必要はありません。税金の納付は、年に一度フランチャイズ税申告または延長申請を行う際に納付する事が義務付けられています。また過払い税額の繰越制度を設けていないため、過払い額は自動的に還付され毎年清算されます。
最低課税額(ミニマム税)
最低課税額を設けていないフランチャイズ税は、年度によっては全く税金が発生しない年もあります。また最終税額が $1,000 未満の場合、納付が免税されます。ただし税額に関係なく申告を行う必要はありますのでご注意ください。
提出期限と延長申請
フランチャイズ税申告と納付期日は、会社の事業年度に関係なく毎年5月15日と規定されています。期日内までに申告書の提出が困難な場合、様式 05-164 を提出する事により最長6ヶ月の延長が認められますが、延長は申告のみに適用されるため、税金の納付は期日内に行う必要があります