固定資産税減税法案(その①)

昨年から注視していた大型減税法案が、テキサス州上下両院で先月可決されました。今回可決された法案は、テキサス在住の方々に大きな影響を及ぼすと想定されますので、一連の流れを詳しく検証したいと思います。

減税法案の背景

近年人口流入が著しく飛躍的に経済規模が拡大し続けているテキサス州は、過去数年財政黒字が続いています。テキサス州の監視機関 The Texas Tribune の調査によると2013年度から連続で財政黒字が続いており、ここ数件間の黒字額は19億ドル(2018年度)、47憶ドル(2019年度)、49億ドル(2020年度)、112億ドル(2021年度)、262憶ドル2022年度となっており、2023年度の財政黒字額は327億ドルに達すると予想されています。今年度(2023年8月期)の予想財政黒字額 327億ドルは、他州の年間予算に匹敵するほど大きく、単純に金額で比較した場合、全米27番目に予算額が大きいサウスカロライナ州の 323億ドルを上回る規模のようです。(テキサス州の2023年度予算額は、カリフォルニア州の5,100億ドル、ニューヨーク州の2,093億ドルに次ぐ全米3番目に大きい 1,276億ドル)

テキサス州の経済発展が財政黒字に貢献している事は容易に想像がつきますが、直接的な要因として物価高による売上税の増収、また原油や天然ガスなどのエネルギー価格高騰から得る増収の恩恵を受けているようです。仮に今年度の財政黒字をテキサス州民全員に均等に分配した場合、一人当たり $1,088 受け取れる計算になるようです。

黒字などの余剰金は、新たな予算案を立ててテキサス住民のために役立てる事が州憲法によって定められています。ただし、具体的な利用方法が定められていないため、財政黒字の還元手段はテキサス州議会によって決める必要があります。全額を今年度の予算(2023年8月期)として追加予算編成、または次年度以降の予算として盛り込むことも考えられます。

減税法案の布石

去年の5月にテキサス州地方選挙が行われた事は記憶に新しいと思われますが、実はその選挙で固定資産税に関わる重要な法案の是非が問われました。投票は圧倒的賛成多数で修正法案が支持され、その投票結果が今回の大型減税法案の布石になったと考えられます。次が去年法制化された法案で、今回の固定資産税減税法案可決の大きな原動力になったと考えられます。

修正法案①(賛成86.91%、反対13.09%)

同修正法案は、高齢者および障害者が対象となり、最も税額の負担が大きい学校区の税率を軽減する内容となっており、修正法案の適用開始は2023年1月1日と制定されています。また同法案の施行によって税収減となる地方自治体に対して州政府が同額を補填する事が保証されている。

修正法案②(賛成84.89%、反対15.11%)

同修正法案は、ホームステッド控除に関わる改正案で控除額を現行の $25,000 から $40,000 に増額する法案でした。対象者が限定されている修正法案①とは異なり、ホームステッド控除の条件を満たす全ての所有者が対象となります。また修正法案の適用開始日が2022年1月1日となっているため、対象者は既にその恩恵を受けている事と思われます。

去年、テキサス州の有権者によて支持された固定資産税に関わる修正法案は、州政府が地方自治体の減収分を補填する内容が盛り込まれていましたが、結果的に地方自治体が得られる税収入の減少となるため、公共事業の低下が懸念されていました。

また近年の不動産ブームに押し上げられる形で上昇し続ける査定額に対し同法律の効果が薄く、金銭的なインパクトが小さいと批判されたため、今年の1月に開催された第88回テキサス州議会で抜本的な税制改革案が協議される事が期待されていました。アボット州知事、テキサス州議会も高騰し続ける固定資産税がテキサス州民の負担になっている事を良く理解していたため今回の固定資産税減税法案を今期州議会の肝いり政策と位置付けて取り組んでいました。議会で論議された内容、上院議会と下院議会の意見衝突、またアボット知事の対応については次号で話したいと思います。

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