固定資産税

そろそろ固定資産税の請求書が居住区の管轄郡から届くと思われますので、今月は今年度の固定資産税とそれに関する地方自治体の動向について紹介したいと思います。

固定資産税額の通知

テキサス州税法第 31.01項によれば、テキサス州内の各税務局は、固定資産の所有者に対して毎年10月1日まで、またはその後数日以内に固定資産税の請求書を郵送する事が義務付けられています。住宅ローン会社(金融機関、またはエスクローなど)が固定資産税を直接納付している場合、請求書の通知は所有者ではなく、税金を納めている債権者に行われます。

各郡の対応はそれぞれ異なるようで、今月号を執筆している時点では近隣4郡の内、タラント郡のみが2024年度の請求を完了しています。

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各地方自治体の動向

固定資産税の算出方法は、各郡の基準によって異なりますが、大まかに次の計算式 [ 固定資産税額=( 評価額 – 控除 ) ✕ 税率 ] によって算出されます。また固定資産税の税率は、複数(郡、市、学校区、消防、病院、特別区)の課税区の合計から成っており、不動産の所在地によって税率が異なります。次の比較検証は、課税区を市に限定した内容となります。

ダラス市(税率は減少、査定額は増加)

ダラス市の今年度予算は過去最高額の 49.7億ドルで、前年度比3.4億ドル(約7%)の増額となります。2024年度の固定資産税の税率は、前年度から比較して $0.031 低く(評価額 $100 に対して $0.7047)なりますが、不動産の査定額上昇に対して特に何も対策を取っていませんので、最終的に前年度より多く固定資産税を支払う結果になると予想されています。ただし、高齢者と身体障害者に対する控除が増額されましたので、該当される方の固定資産税額は、減額されるでしょう。

プレーノ市(税率据え置き、査定額は増加)

プレーノ市の今年度予算は 7.6億ドルで、前年度比2,900万ドル(約4%)の増額となります。然しながら、近年税収に伸び悩んでいるため今年度から固定資産税と水道代の増額に踏み切りまして。市の関係者によると税収が伸び悩んでいる主な理由として新たに土地開発を行える余地が年々少なくなってきている事を挙げ、今後は過去数10年間のような発展は難しいと予想を立てています。その為、現状の行政サービスを維持するためには、支出に対し十分な財源を確保するために税収を調整する事で対応を行いました。

プレーノ市の固定資産税率は、前年度から据え置き(評価額 $100 に対して $0.416)となっていますが、不動産の評価額が前年度と比較して上昇しているため、平均約 $186 増加となります。

フォートワース市(税率は増加予定、査定額の上昇は凍結)

フォートワース市の今年度予算は 27.9億ドルで、前年度比1.9億ドル(約7%)の増額となります。フォートワース市を管轄しているタラント郡は、商用物件を除く不動産の査定額を2026年度まで凍結する法律を成立させ、同法は2024年度の査定額からの適用となりました。その為、タラント郡に住宅をお持ちの方は向こう3年間は住宅の査定額が固定されます。本来であれば、自動的に税負担が抑制される事に繋がりますが、税収の減少を危惧したフォートワース市は、税源確保のために固定資産税の税率を増加する事で調整を行いました。

過去10年間フォートワース市は、査定額の上昇に合わせて固定資産税の税率を低く抑える政策を取っていましたが、今回のタラント郡の査定額凍結に対して真逆の対応を迫られる結果となりました。予算委員会で2024年度の税率は土壇場で据え置き(評価額 $100 に対して $0.6725)に決定しましたが、2025年度予算では $0.005 増加案(評価額 $100 に対して $0.6775)が既に提言されており、税率の増加は必至でしょう。

フリスコ市(税率は減少、査定額は増加)

フリスコ市の今年度予算は 2.7億ドルで、前年度比3,900万ドル(約4.5%)の増額となります。固定資産税がフリスコ市の主な財源で、2024年度の固定資産税の税率は、前年度から比較して $0.01 低く(評価額 $100 に対して $0.425517)なりますが、不動産の査定額上昇により固定資産税の税収は前年比 $1,600 万ドル増加(内新築物件からの増収額は約半分の $760 万ドル)すると予想されています。

また興味深い事に前年度のデントン郡の査定額の誤りが原因によりフリスコ市は $500 万ドルの税収を失ったようです。直接の原因か確認できませんが、10月1日からフリスコ市内の水道代、下水道代の税率がぞれぞれ 6%、10% 上昇されます。

マッキニー市(税率は減少、査定額は増加)

マッキニー市の今年度予算は 8.9億ドルで、前年度比3,900万ドル(約4.5%)の増額となります。マッキニー市は、近年の人口増加や都市開発によって上昇し続ける査定額に対し税率を調整する事で市民の税負担を軽減する政策を取っています。

2024年度の固定資産税の税率は、前年度から比較して $0.012 低く(評価額 $100 に対して $0.415513)設定されていますが、不動産の評価額が上昇しているため結果的に固定資産税が前年比平均約 $144 の増加と予想されています。

あとがき

各地方自治体の規模やそれぞれが抱えている問題が異なるため単純に固定資産税の税率を比較する事はできません。また、固定資産税の対象となる不動産の所在地によって課税区も異なりますので、一概に税率を元に善し悪しの判断には注意すべきでしょう。然しながら、各地方自治体の置かれている状況や政策を比較する事で不動産の所有者(納税者)に対する取り組みの違いを参考にする事は可能でしょう。

今回紹介した全ての地方自治体の年始が10月1日のため、今月から水道代が上がった場合、原因は容易に推測されるでしょう。

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