個人所得税申告の準備

今年も所得税の申告時期がやってまいりました。米国では納税者が自ら所得の確定申告を行うのが恒例の作業となり、毎年申告時期が近づくとストレスを感じる方が多いと良く耳にします。今月は、所得税申告に必要な各種税務書類やその他関連する情報について紹介したいと思います。

源泉徴収票

米国で従業員として働き給与を受取っている方は、毎年1月の下旬あたりに Form W-2 と呼ばれる源泉徴収票を受取ります。源泉徴収票とは、会社が従業員に対して発行する給与に関する所得明細書で、課税当該年度期間中に支払われた給与、源泉徴収された所得税、社会保険税、医療保険税、及び福利厚生などが記載されている書類です。

源泉徴収票に記載されている情報(名前、住所、社会保障番号、納税者番号、給与額、源泉額など)に誤りがある場合、誤っている箇所を雇用主に伝え、修正用の源泉徴収票 (Form W-2c) を発行してしてもらう必要があります。また源泉徴収票に記載される名前と社会保障番号(Social Security Number)が社会保障庁に登録さている情報と一致する必要があるため、結婚後に苗字を変更されても社会保障庁で変更手続きを行っていない方は、社会保障庁に登録されている旧姓で源泉徴収票を発行してもらう必要がありますのでご注意ください。

雑収入票

自営業者は、源泉徴収票の代わりに雑収入票 (Form 1099-MISC1099-NEC) と呼ばれる収入報告書を取引先から受け取ります。雑収入票は、主に下請け業者や委託業者などに対して発行される情報申告用紙で、課税当該年度期間中に受け取った課税所得が記載されている書類です。同書類に記載されている情報は、IRS(内国歳入庁)にも報告されるため、自身が把握している収入額と書類に記載されている金額が一致しない場合、取引先に問い合わせて確認する事をお勧めします。

その他の収入報告書

利息や配当を受け取った方は、それぞれの詳細が記載された書類 Form 1099-INT1099-DIV を金融機関から受け取ります。以前までは紙の書類が納税者に郵送されていましたが、近年はデジタル化(PDF版)された情報が電子メールで連絡、または各自オンラインからダウンロードするよう通達される傾向にあります。また金額が$10ドル以下の場合、1099-INT が送付されない事がありますが、送付の有無に関わらず課税対象所得となりますので、自己責任のもと金額を確認する必要があります。

米国居住者の方は、日米両方の所得が課税の対象となるため、日本の金融機関から受け取った所得額を確認する必要があります。日本で受け取った利息や配当に対して日本側で税金が課税された場合、二重課税の防止策として米国の所得税申告で外国税額控除として取り扱う事が認められています。

住宅関連(自宅・投資物件)

自宅、または投資物件を賃貸されている方は、関連する収支情報を収集する必要があります。費用として控除が認められている主な項目として住宅保険、セキュリティー費、管理費、修繕費、固定資産税などが挙げられます。住宅ローンを組んでいる方は支払利息も控除できますが、元金返済分は費用として控除できません。住宅として住まわれている方は、固定資産税とローン支払利息を項目別控除として利用できるケースがありますので、情報を収集する事をお勧めします。

支払利息の情報は、借入先の金融機関から Form 1098 を入手する事で確認する事が出来ます。固定資産税をエスクロー(借入先の金融機関経由で納税する仕組み)で支払われている方は、控除対象の固定資産税額も Form 1098 で確認する事が出来ます。エスクローを利用されていない方は、固定資産税の支払いレシート、または所轄の郡税務署のウエブサイトから確認する事が出来ます。

その他費用控除

非営利団体へ寄付を行った場合、寄付金(または寄付物品)なども控除する事が出来ますので、寄付の証明となるレシートなども入手すると良いでしょう。控除の対象となる非営利団体は、IRSの認定団体に限られていますのでご注意ください。認定団体は次のリンク先から確認する事が出来ます。

学費を借り入れして利息を支払われている方は、$2,500 を上限とし支払利息を控除する事が認められていますので、ローン支払いに関する支払明細書 Form 1098-E を借入先から入手してください。

外国金融口座

米国外に金融口座(米国系列の金融機関を含む)を持っている方で、年間最高残高が一度でも $10,000 (全口座の合計残高)を超えた場合には、所得税申告書とは別に外国金融口座開示書(FinCEN Form 114)の提出が義務付けられています。

開示の対象となっている口座は、銀行、証券株式、投資信託、生命保険の投資口座などとなっており、対象者は米国市民、永住権保有者、米国居住者または米国内で何らかのビジネス活動を行っている個人・法人またはそれに順ずる団体が対象となっています。未報告に対する罰則規定がかなり厳しいため(一口座に付き $10,000 の罰金、意図的な隠ぺいに対しては $100,000 または最高残高の 50% いずれか多い額の罰金)、細心の注意を払って対処する必要があります。

旅券所持証明

帯同している扶養家族の為に納税者番号 (Individual Taxpayer Identification Number) の申請が必要な方は、申請者の本人確認として「旅券所持証明」が必要となります。旅券所持証明は、管轄の在米日本領事館から入手する必要がありますので、申請に必要な手続きは直接日本領事館にご確認ください。

あとがき

先月号でも触れましたが、2024年度の申告期日は例年通り4月15日となります。申告に必要な情報が期日までに準備できない場合、Form 4868 を提出する事で最長6ヶ月の延長をする事が認められます。ただし延長が認められるのは申告書の提出に限られているため、追徴金が発生する場合には申告期日までに納付する必要がありますのでご注意ください。

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