毎年恒例となる個人所得税の申告が終わり早数週間が経ちましたが、読者の皆様は適切に課税所得を申告されたと思われます。給与、ボーナス、チップ、利子、また配当などが課税対象の所得だと言う事は殆どの方が周知の事と思われます。今回は意外と知られていない課税の対象となる所得について話をしたいと思います。
違法行為による収益
違法行為(麻薬、密売、横領)から得られる収益は、元々の活動自体が違法なだけに課税対象外と思われがちですが、米国税法上れっきとした課税所得として認識されています。内国歳入庁は課税所得に対し合法・違法行為の区別をしておらず、それらから得られる収益全てに対して課税・徴収する権限が与えられております。違法行為に対して直接処罰はいたしませんが、所得の申告漏れがあった場合には現行の税法に沿って摘発を行います。
賄賂・キックバック
便宜を図る事で受け取る賄賂やキックバックも課税対象の所得となり、IRSの観点から個人事業主が受け取るコミッションとして取り扱われます。その為、賄賂やキックバックなども事業所得として申告する必要があります。
保険金
保険契約者が受け取る死亡保険の保険金は非課税ですが、保険金に対する利子収入は課税対象となります。契約書に死亡保険金が明確に記載されていない場合や、生命保険を途中で解約し積立金の払い戻しを受ける場合は、受取金が保険料金を超える部分に対して課税所得とし申告する必要があります。ただし末期症状の患者本人が生命保険の払い戻しを受ける場合には、例外的に非課税扱いとすることが認められています。
訴訟による受取金
給与の損失補てんとして受け取る補償金や、身体的損害以外(差別、契約違反、プライバシー侵害、名誉毀損、ハラスメント等)に対して支払われる補償金は全額課税所得となります。また、身体的損害を受けた場合でも死亡したケースを除き、懲罰賠償として支払われる金額に対しては課税対象となります。
陪審員手当て
米国民の義務として出廷を命じられる陪審員の審議手当てとして受取る金額もれっきとした課税対象所得です。ただし受け取った金額をそのまま雇用者に支払う義務がある場合は、一旦収入として認識する必要がありますが、同額を減額調整し申告することができます。
失業給付金
失業中に受け取る失業給付金もれっきとした課税対象所得です。事故や病気が原因で受け取る障害給付金(一定期間の収入を補填する目的で受け取る給付金)も課税対象となり、通常それら給付金は源泉徴収が行われませんので、受給された給付金に対する税金分を確保する必要があります。
無利子での貸付
無利息あるいは低い利子率で借入金がある場合は、実際の利子授受の有無にかかわらず、連邦利子率を用いて計算された利子額との差額分をみなし利息収入として認識しなければなりません。これは資本主義経済の本質的概念に相反すると言う理由から、1980年代から規制されるようになりました。
債務免除益
借金が膨らんで返せなくなり、銀行などの債権者が債務者に対し借金を免除した場合、責務者は免除された金額を所得として認識しなければなりません。しかし、例外もあり、破産申請や差し押さえによる債務免除は課税対象外となります。
奨学金
学位取得目的で支給され、学費や教材費として使われる奨学金は非課税扱いとなりますが、語学研修として受け取る奨学金、または学費や教材費以外(寮費、食費など)に奨学金が使われた場合には同額が課税の対象になります。また学術調査や教育助手の対価として奨学金を受取る場合、労働に対する所得として取り扱われるため課税対象所得となりますので、注意が必要です。
ギャンブル・賞金・賞品
ギャンブルによる損失を差し引いた後の純利益は全て課税の対象となります。奇妙な話ですが、ギャンブルを職業とする納税者は、ギャンブル行為に関連する費用(例えば旅費、食費など)は全て経費として計上出来る事が認められています。テレビ番組や各種イベントの抽選で当たる賞品(車・旅行券・ギフト券)に対しては、その受取った賞金・賞品の市場価格(抽選くじを購入した場合には、購入費を引いた差額)が所得として見なされます。またイベント主催者が非営利団体だとしても、受け取る賞金・賞品は所得として認識されますのでご留意ください。
仮想通貨の譲渡益
アメリカは国家して仮想通貨を法定通貨としては認めていませんが、有価証券などの資産として取り扱っています。その為、仮想通貨の売買取引によって得た譲渡損益(キャピタルゲイン・キャピタルロス)に対して租税を行います。損益が確定していない含み損益は(主に価格の変動などの影響によるもの)は課税の対象外となりますが、実際に売却した資産に対する実現損益は課税の対象となります。
所有者不明の発見物
運よく埋蔵金や金塊などの財宝を掘り当てた場合、発見した当該年度の課税所得として取り扱われますので、掘り当てた財宝の時価に相当する税金を納付する必要があります。その為、両手を上げて喜ぶと同時に納税義務の事も忘れずに頭の隅に入れておいてください。