2025年度テキサス州税制改定

毎回奇数年度に開催される第89回テキサス州議会が6月2日に閉会されました。今議会では主に教育(学校選択制度)と固定資産税の軽減策が議論され、法案が上下両議会の承認を得て可決されました。今月は、テキサス在住の方々に大きな影響を及ぼす固定資産税の改定事項について紹介をしたいと思います。(上院議会賛成31票に対し反対0票、下院議会賛成107票に対し反対21票)

改定法案の背景

近年飛躍的に経済規模が拡大し続けているテキサス州では、人口流入と共に不動産価格も年々高騰しており、それに伴い不動産にかかる固定資産税額も年々上がってきています。高騰し続ける固定資産税がテキサス州民の負担になっている事を良く理解している州政府は、ここ数年間財政黒字を充当する形で州民の税負担を軽減してきました。

可決された法案

今減税法案は、住宅所有者を対象とした減税法案(上院法案第4)と企業を対象とした減税法案(上院法案第23)から構成されており、3,380億ドルの予算の内、約510億ドルが固定資産税の軽減に充てられます。同額は州総予算のおよそ15%に相当し、テキサス州史上最大の固定資産税軽減措置となります。

上院法案第4

これまで州政府は、控除額を調整する事で住宅所有者の税負担を軽減してきました。ホームステッドと呼ばれる控除は、過去数回の法改定により2021年度に2万5千ドル、2022年度に4万ドル、2023年度に現行の10万ドルに大きく増額されました。同法案はホームステッド控除額を更に増額し、2025年度適用額を現行の10万ドルから14万ドルに引き上げます。更に65歳以上の高齢者および障害者は追加で6万ドルの控除が適用され、控除額は合計20万ドルとなります。同法案の施行による減税効果は一人当たり年間約500ドルと試算されています。またこれらの減税政策によって地方自治体の税収が減少した場合、減収分を補填するために約40億ドルの予算も確保されています。

上院法案第23

これまで企業に対し大きな減税措置が講じられていませんでしたが、同法案により動産税(備品や在庫に対する税金)の免除額が現行の 2,500ドルから12万5,000ドルへ大幅に増額されます。今回の免除額増加により対象となる企業は、年間約 2,500 ドルの節税効果が得られると試算されています。

今後の流れ

先に述べた両法案は、今後テキサス州会計監査官の認定を受けた後、最終審議のためアボット州知事のもとに送られます。通常、州知事が法案に署名をした時点で効力を発しますが、同法案は州憲法を改定する必要があるため、来る11月4日の州民投票で過半数以上 (Simple Majority) の賛成票を得る必要があります。前回の州民投票では80%以上の賛成票が得られたため、今回も圧倒的多数票で承認される見通しとなっています。同法案が成立した場合、2025年度の固定資産税(および動産税)に遡って有効となるので、対象となる住宅所有者や企業は税制改定の恩恵を年度内に受ける事ができます。

取り残された課題

  • 賃貸者への救済欠如

テキサス州への人口流入と共に家賃も年々高騰しており、賃貸者への経済的負担も増加基調にあります。今法案は固定資産税を納めている住宅所有者対する減税効果が期待されていますが、間接的に固定資産税を負担している賃貸者への救済とはなりません。その為、同減税法案は公平性に欠けていると指摘を受けています。税負担軽減の恩恵を受けた家主が賃貸者に対してその恩恵の一部を還元するとは考えられにくいため、今後賃貸者に対する救済策も必要でしょう。

  • 根本的な教育予算支援の欠如

今回の税制改定は州政府による一時的な学区予算の補填政策となるため、州政府が公共教育へ直接支援(予算の負担)を行わない限り、長期的視野において学区予算の税収源確保の解決には至りません。永続的に納税者の税負担を軽減するためには、一時的な予算補填政策ではなく州政府が直接公共教育費用の予算を拠出する仕組みが必要であると考えられています。その為、一部の議員からは州政府の財政黒字が無くなれば、また以前に逆戻りするだけと危惧する声も挙げられています。

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