活動拠点選択の重要性

 

昨今、トヨタやクボタなどの大手企業が相次いで本社移転を発表してからテキサス州が注目を集めていますが、その熱視線はしばらく収まりそうにありません。地平線が永遠に続くテキサス州にいったい何があるのか。企業はテキサス州にいったい何を期待しているのか。今、テキサス州がなぜ注目を集めているのか四部にわたりその理由を税務上の観点から検証を行いたいと思います。

近年の動き

2014年4月にトヨタがテキサス州へ移転を発表してから早2年が経とうとしていますが、その他の会社もそれを追随するかのようにテキサス州へ移転を決めたり、または移転を前提とした調査を始めたりとここ一年めまぐるしい動きが絶えません。

 
米国で事業を展開するにあたり進出形態(駐在員事務所、支店、現地法人)および会社形態(一般法人、株主課税法人、パートナーシップ、LLC)の選択は重要な要素である事は多くの方が理解されていますが、活動拠点(州)の選択も会社の業績に大きな影響を及ぼす一因となりえる事も理解する必要があります。

 
州による主な違い

米国では各州が会社法をはじめとする事業活動に関するあらゆる環境(雇用法、税法等)をそれぞれ独自に制定している為、活動拠点を選択するという事はその州で制定されている制度はもちろんの事、それらを取り巻くあらゆる環境も含めて選択を行うという事になります。

 
前述のとおり米国では州により税法また事業活動環境が大きく異なるため、活動拠点を漠然と決めるのではなく、会社の戦略を基準に事業環境を検討して決定する事が重要となります。各州による主な違いは所得税、売上税、失業保険税、動産税、固定資産税などが挙げられ会社へ掛かる負担も大きく異なります。

 
例えば一般的な駐在員の場合、米国支給の手取り金額(ネット支給額)が保障されているケースが多く、その所得に対する税金を会社側が負担するのが通例となっています。また給与以外の雇用条件(住宅手当、教育補助等)も福利厚生の一部として提供する雇用契約を取り交わす事もあります。これら福利厚生は課税所得として認識する必要がある為、それらの金額に課税される所得税も会社が負担する事となり、会社側としては多大な負担になる事は言うまでもありません。

 
現在所得税を設けていない州はアラスカ、フロリダ、ネバダ、サウスダコタ、ワシントン、ワイオミング、そしてテキサスの7州となっており、各州は所得税を設けていない代わりに他の形で州財源を確保しています。アラスカ州は石油関連の税金、フロリダ州は売上税と固定資産税、ネバダ州は説明するまでもなくギャンブル関連の税金からそれぞれ州政府の財源を確保しています。テキサス州は所得税を設けていない代わりに州財源を主に売上税と固定資産税から調達しています。

 
アラスカ、モンタナ、ニューハンプシャー、デラウエア、オレゴン州は売上税を設けておらず、売上税を設定している45州のうち税率が一番低いのはコロラド州の2.9%で、一番高い税率はカリフォルニア州の7.5%となります。(郡市町村の税率を除く)

 
その他の検討事項

事業の活動拠点を選択するにあたり税金は単なる一つの検討事項であり、必ずしも所得税または売上税を設けて無い州が事業活動拠点として有利であると言える訳でないため、その他の要素を含め総合的に判断をする必要があります。

 
[ その他の検討事項 ]

  • 優遇税制・サポートの有無
  • 労働力、人件費および雇用関連法
  • 日本からのアクセスや物流・交通の利便性
  • 不動産価格、物価、生活費
  • コミュニティーおよび生活環境(日本食、駐在員へのサポート環境など)
  • 将来的展望・展開計画(中南米などへのアクセスなど)

 

テキサスとカリフォルニアの違い(その①) >>

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