結婚するとは

 

生涯の伴侶に巡り合い、お互いを高めつつ、時間を共に共有する事は奇跡に近い出来事ではないでしょうか。私事ですが、弟の結婚式に参加するため今月末に一時帰国する事となりました。弟の結婚式に便乗して、今月は結婚に関連する税務面での影響また諸手続きについて話をしたいと思います。

 
結婚する事による税務メリット

一部例外もありますが、一般的に独身納税者に比べ夫婦合算申告を行う既婚納税者は、税務面でいろいろと優遇されています。主な税制優遇事項として次の項目が挙げられます。

① 控除額の増加
夫婦合算申告を行う最大のメリットは、控除額の増加による節税効果を得られる点が挙げられます。納税者本人のみならず配偶者の人的控除を得られ、標準控除やその他の控除が夫婦合算申告をする事により増額されます。2017年度申告の人的控除は一人当たり $4,050 で、標準控除額は $12,700 (独身の場合は $6,350)となります。

② 低税率の適用
米国の個人所得税の税率は申告身分により税率(累進課税)が設定されており、同じ課税所得額にも関わらず申告身分によりそれぞれ違った税率が適用されます。税率が一番高く設定されているのが夫婦個別申告となっており、次いで独身、世帯主、夫婦合算・適格未亡人の順となります。例えば、独身および夫婦合算申告を行う納税者の課税所得額がそれぞれ $50,000 と仮定した場合、独身者の納付額 $8,238.75 に対し夫婦合算申告を行う方の納付額は $6,567.50 となります。

③ 個人年金積立への出資
個人年金積み立ての出資金は年度ごとに上限が設定されていますが(2017年は一人当たり$5,500)、婚姻関係にある納税者は収入がまったく無い配偶者の分も年金積み立て出資ができるため、同額に対し個人所得税課税の繰越をする事が可能となります。

 
結婚する事による注意事項

赤の他人同士の人が運命的に巡り会い結婚をするという事は、大変めでたく嬉しい事なのですが、同時に対処しなければならない面倒な事務的作業も発生します。主な注意事項として次の項目が想定されます。

① 名前の変更
結婚に際し法的に名前(苗字)を変更した場合、米国社会保障庁に名前変更の旨を連絡し新しい名前が明記された社会保障番号 (Social Security Number) を入手する必要があります。ここで注意して頂きたいのが社会保障番号に登録されている名前と個人所得税申告書に記入する名前は一致する必要があるため、もし何らかの手違いで名前が一致しない場合には申告書が却下されますので注意する必要があります。名前の変更は様式 SS-5を米国社会保障庁に提出する事により手続きを済ますことが出来ます。

② 住所の変更
ご存知のように 郵便局による郵便物の転送はある一定期間に限られているため、それ以降の郵便物は指定の住所へは配達されなくなります。そのため転送終了以降も税務関連の通知などの大切な書類が確実に届けられるように住所変更申込書(様式 8822)をIRSへ提出することをお勧めします。

③ 源泉徴収額の見直し
夫婦合算申告をする事により追加控除や低税率の恩恵を受けることが出来るため、源泉徴収額を見直す必要があります。源泉徴収額を変更するためには様式 W-4を雇用者に提出すれば簡単に変更する事が可能です。

④ 連帯責任
夫婦合算で申告を行った場合、税金の納付はもちろん支払い不足による追加徴税や利子・罰則金は夫婦に課せられます。その為、申告後に離婚をした場合でも離婚調停の内容に関係なく両者に支払いが義務付けられます。厄介なのが離婚調停の一部に「一方の元配偶者が全ての納付義務を負う」とはっきり明記した場合でも連帯責任は免除されませんのでご留意ください。

ちなみに申告身分は12月31日時点の婚姻状況によって判断されるため、年初に独身であっても年末の時点で法的に結婚が成立している場合には夫婦合算として申告する事が出来ます。逆にほぼ1年間を通して婚姻関係にあったとしても、12月31日時点で法的に離婚が成立している場合は夫婦合算申告をする事はできません。また別居状態にあっても法的に離婚が成立していない場合は、夫婦合算申告をすることが可能です。

最後にこの紙面をお借りして弟夫婦へ。「結婚おめでとう。末永くお幸せに。これからも納税者の義務として引き続き税金を納めてください。」

 

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