去年の7月号でオンラインショッピングの課税に影響を及ぼす連邦最高裁判所の判決(Wayfair訴訟)について話をしましたが、その影響によりテキサス州の売上税の租税基準が変更され2019年10月1日から施行されました。今月は売上税の変更内容を検証したいと思います。
売上税の仕組み
ご存知のとおりアメリカでは国(連邦)レベルの売上税が存在せず、各州政府や地方自治体がそれぞれ独自の税制を導入しています。税率や課税範囲も各州によって異なりますが、基本的には有形資産が最終消費者に販売された時点で税金が発生する仕組みとなっています。また原則として税金の徴収および納付義務は販売側に帰属し、商品を販売する際に売上税を購入者から徴収する方法が取られています。
Wayfair訴訟とテキサス州の対応
Wayfair 訴訟の判決以前、売上税に対する租税はまだインターネットが普及していなかった時代に出た判例が基準となっていたため電子商取引などのインターネットを介するビジネスモデルに対応出来ていませんでした。その為、各州政府はむやみやたらに課税を行えるのではなく、先ず対象となる納税者に対して事業関連性に基づいた課税権を確立する必要がありました。その課税基準が、2018年6月21日に連邦最高裁判所が下した判断により大きな転換期を迎える事となりました。
判決を受け各州ではWayfair訴訟のモデルを導入すべく売上税改正の審議に入り、テキサス州では今年の上旬に開催された第86回テキサス州議会で売上税の改正案が審議可決されました。注目すべき変更は、Marketplace ProviderとMarketplace Sellerに対する徴収義務の規定(下院法案第 1525)と税金の徴収義務を緩和するための措置(下院法案第 2153)となります。同法案の可決により売上税の規定(テキサス州行政法 3.286)が変更され、2019年10月1日から施行される事となりました。
定義(部類)
先ず変更内容を説明する前にキーポイントとなる定義を理解する必要があります。それら定義はMarketplace、Marketplace Provider、Marketplace SellerそれとRemote Sellerとなります。
Marketplaceは従来型の店舗、カタログ、またはインターネットを含めた空間で商取引を行う「場所」として定義され、Marketplace providerはそれら商取引の「場所を提供する者」または「場所の所有者」として定義されています。Marketplace Sellerは商取引を行う場所で「物を売る者」と定義され、Remote Sellerはインターネット、カタログ、電話、通信販売などを介して「州外へ物を売る者」と定義されています。
例題を用いて前述の定義を分かり易く説明すると次のようになります。テキサス在住のイロハさんが楽天を利用して新聞を販売した場合、イロハさんはMarketplace Sellerとなり、楽天がMarketplace providerとなります。更にイロハさんが近隣のオクラホマ州に新聞を販売した場合、イロハさんはMarketplace Sellerであり、同時にオクラホマ州に対してRemote Sellerとして取り扱われます。仮に楽天が自社サイトから直接物を販売した場合、楽天はMarketplace Sellerであり且つMarketplace providerとなり、自社拠点以外の場所に物を販売した場合、同時にRemote Sellerともなります。
この様に状況によって一者が一役または同時に複数の役になり得ることがあり、それぞれの租税義務が異なるため、どの部類に属するかの判断がとても重要となります。次号では変更の詳細および部類別の租税義務について説明をしたいと思います。