去年の8月号で電気自動車補助金制度について紹介をしました。今月は補助金制度の最新情報および来年の1月1日から適用が開始する補助金の前払い制度について紹介をしたいと思います。
補助金制度
2022年8月16日に施行されたインフレ低減法 (Inflation Reduction Act of 2022) の一部として導入された電気自動車補助金制度(正式名称クリーン車クレジット)は、従来の補助金制度 (内国歳入法第 30D条) を修正し、条件を満たす新車購入に対し最大 $7,500(中古車は最大 $4,000)の補助金を付与する制度となります。補助金を受けるためには諸条件を満たす必要があり、次がその条件となります。
【補助金対象条件】
① 使用条件
車両は個人またはビジネス用途として購入され、且つ主に米国内で使用する事(再販目的での購入車両は対象外)
② 所得条件
購入者の所得が新車購入の場合、独身者 $150,000 以下(夫婦合算 $300,000 以下、世帯主 $225,000 以下)、中古車購入で独身者 $75,000 以下(夫婦合算 $150,000 以下、世帯主 $112,500 以下)である事
③ 車両条件
車両条件は大きく分けて4つ区分され、全ての条件を満たす必要があります。
- 機能条件:7キロワット時以上のバッテリー容量を備え、車両重量が 14,000 ポンド以下(6,350キロ以下)で、且つ認可された自動車メーカーによって製造される事
- 組立条件:車両の大部分が北米で製造または組立される事
- 資源条件:車両に搭載されるバッテリーが、アメリカと自由貿易協定を結んでいる国で採取された資源(リチウムなどのレアメタル)、またはそれら協定国で処理された資源を利用している事
- 価格条件:メーカー希望小売価格が普通自動車は $55,000以下、ピックアップ、SUVとワゴン車は $80,000 以下である事(中古車は販売価格が $25,000 以下)
先ず第一番目の「使用条件」は、実際に電気自動車を購入される方が自ら意思確認を行う程度で十分と考えられます。次の「所得条件」は、申告された直近の個人所得税申告書(様式 1040、11項目)に記載の数字で確認する事が出来ます。最後の「車両条件」は、内容がかなり細かく規定されているため、見極めるのが難しいと考えられます。その為、車両を扱っているディーラーや販売業者に確認してもらう方が賢明でしょう。直接自分で確認をしたい場合、次のリンク先で車両情報を入力して検索する事が出来ます。
現時点で補助金制度の条件を満たしている自動車メーカーは、ほぼ米国(キャデラック、シボレー、クライスラー、フォード、ジープ、リンカーン、テスラ、リビアン)で占められ、海外勢は3社(BMW、フォルクスワーゲン、日本車)で、日本の自動車メーカーは日産のみとなります。(車種は2024年リーフ)
補助金受給手段
現時点で補助金の申請は、対象となる車両を購入された納税者が各々の所得税申告と共に補助金を申請する必要があります。その為、いったん車両の購入額を全額支払い、後日所得税の申告を行う時点で税額控除として取り扱われるシステムとなっています。
ただし、2024年1月1日以降に対象となる車両を購入する場合、購入者がディーラーや販売業者へ「補助金の権利」を移行する事が可能となり、同額を直接販売価格から減額して購入できるようになります。補助金の前払い制度を利用するためには、購入先のディーラーや販売業者が Energy Credit に登録を行っている事が条件となり、購入の際に「補助金の権利」を販売側に移行する旨同意する必要があります。更に「所得条件」の確認として該当年度の個人所得税申告で車両購入情報を申告書と共に提出する事が義務付けられています。
前払い制度の留意点
補助金の対象となる車両を購入する際、販売側は「車両条件」を確認する事は出来ますが、「使用条件」または「所得条件」を確認する義務を負わないので、購入者の自己責任で判断を行う必要があります。その為、実際に所得税の申告を行った時点で後から「所得条件」を満たすことができないと判明した場合、前受け金として受け取った補助金を返金する羽目になりかねないので特に注意が必要です。また補助金制度の条件が常に変更されているため、補助金制度の利用を考えている方は、購入前後に最新情報を確認する事が望ましいでしょう。