2024年度インフレ調整

ご存じたと思われますが、物価指数やインフレ変動に伴い毎年税制の微調整が行われています。今月は先月発表された2024年度申告に関する主な税制調整事項の紹介と検証を行いたいと思います。


標準控除

標準控除の金額はインフレ調整に合わせて毎年増額され、昨年度は高インフレーションの影響もあり例年(平均約1%から3%前後)と比較し標準控除が大幅に増額(前年度比伸び率約7%)されました。今回発表された2024年度申告の伸び率は約5%となっており、2023年度と比較しやや低めに抑えられた印象を受けました。


【申告身分別の控除増加額・伸び率】

  • 独身者のは $13,850から$14,600($750の増額、伸び率約 5.42%)
  • 夫婦合算は $27,700から$29,200($1,500の増額、伸び率約 5.42%)
  • 世帯主は $20,800から$21,900 ($1,100の増額、伸び率約 5.29%)

税率

個人所得税の税率は、累進課税(課税所得の金額によって税率が変動するシステム)と呼ばれる7段階の課税方法が採用されています。現行の7段階に変更はありませんが、税率が適用される課税所得額の範囲が緩和されました。課税所得額が税率の適用範囲ギリギリの納税者は、今回の変更によって恩恵を受ける事が出来る仕組みになっています。

例えば、独身者で課税所得額が $100,000 の場合、2023年度申告の適用税率は 24% になりますが、2024年度は同額でも低い税率の 22% が適用されます。このように税率の適用範囲変更によって恩恵を受ける方がいる反面、課税所得額が中央値の場合、全く恩恵を受けない方もいると思われます。(例、独身者で課税所得額が $150,000 の場合、適用税率は両年度ともに 24%)また、税低税率および最高税率に変更はなく、それぞれ10%と37%の据え置きとなります。


2023度
 税率 独身者 夫婦合算
 10% $11,000 以下 $22,000 以下
 12%   11,000 以上   22,000 以上
 22%   44,725 以上   89,450 以上
 24%   95,375 以上 190,750 以上
 32% 182,100 以上 364,200 以上
 35% 231,250 以上 462,500 以上
 37% 578,125 以上 693,750 以上

 

2024度
 税率 独身者 夫婦合算
 10% $11,600 以下 $23,200 以下
 12%   11,600 以上   23,200 以上
 22%   47,150 以上   94,300 以上
 24% 100,525 以上 201,050 以上
 32% 191,950 以上 383,900 以上
 35% 243,725 以上 487,450 以上
 37% 609,350 以上 731,200 以上

代替ミニマム税基礎控除

あまり知られていませんが税金の計算方法には二通りあり、納税者は通常の計算方法で算出された税額または代替ミニマム計算方法で算出された税額何れか多い方の金額を支払う仕組みになっています。代替ミニマム税は高所得者を対象とした税制で、所得に対して一定額の税負担を促す仕組みになっています。通常の税金算出に考慮される標準控除と同様に、代替ミニマム税も課税所得額から定額を差し引く基礎控除が設定されており、次が2024年度のインフレ調整額となります。


【申告身分別の基礎控除増加額・伸び率】

  • 独身者は $81,300から$85,700($4,400の増額、伸び率約 5.41%)
  • 夫婦合算は $126,500から$133,300($6,800の増額、伸び率約 5.38)
  • 夫婦個別は $63,250から$66,650 ($3,400の増額、伸び率約 5.38%)

401kの年金積立上限

会社が提供する401kなどの任意型年金積み立てプランは、税引き前所得から積立金を捻出する事が認められています。税金は定年を迎えて実際に年金を引き出す時に課税される仕組みになっていますので、税前積立金をフルに活用して資産を増やせるメリットがあります。毎年 $1,000増加傾向にあった積立金の上限は2023年に限り$2,000に倍増されましたが、2024年度の増額は $500 と平年以下に抑えられた結果になりました。(上限 $22,500 から $23,000)


あとがき

2022年に大幅なインフレ上昇が起こりましたが、政府の発表によるとここ数か月は減退基調にあるようです。米労働統計局 (U.S. Bureau of Labor Statistics) 発表の消費者物価指数によると2023年の年間平均上昇率は、2023年10月末時点で約 3.2% となっているようですので、数字のみを比較した場合、今回発表の増額分で十分対処できるように映ります。然しながら、一般家庭レベルでのインフレ減退の実感には程遠く、今回のインフレ調整が実際にどれだけの効果を発揮できるのか疑問に感じられます。

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