先月は不動産投資の形態について話をしましたので、今月は不動産購入時の注意事項について税務の観点から検証したいと思います。間接投資の場合、対応出来る範囲に限りがありますので、ここでの検証は直接投資に関わる注意事項に限定させて頂きます。
売手の居住確認
米国で不動産を購入する際、購入者に対して税法上特に規制はありませんので、誰でも自由に不動産を購入することが出来ます。そのため、納税者番号 (Social Security Number) や法人番号 (Employer Identification Number) を持っていない外国人でも不動産を購入する事が出来ます。ただし、購入する不動産の持ち主(売手)が、非居住者(個人、法人共に)の場合、購入側に税金の徴収義務が発生しますので注意が必要です。
不動産物件を非居住者から購入する場合、購入者は買値の10%を源泉徴収し、IRSへ納付する義務があります。そのため、購入前に居住身分証明書を入手し、売手の居住身分を確認する必要が重要となります。
同種交換 (Like-Kind Exchange)
次の何れかの条件を満たす方法で物件を購入した場合、同種交換取引として扱われ譲渡益の繰り延べが可能となります。その為、売却または購入前に事前調査を行う事が重要となります。ただし、同税法が適用されるのは投資物件に限られていますので、居住目的で購入する場合は適用外になりますのでご留意ください。
【同種交換条件】
- 物件売却後45日以内に購入物件を特定する事、または
- 物件売却後180日以内もしくは確定申告期日のどちらか早い方までに新たな物件の所有権を取得する事
購入時に発生する税金
他の物品とは異なり不動産は、売上税 (Sales Tax) 対象外項目のため、不動産を購入する事に対して売上税は発生しません。不動産に付随する固定資産税は、通常売買契約日を元に売手と買手側とに日割りで負担分を分割されます。
住宅として保有する不動産に対してHomestead Exemption と呼ばれる固定資産税の基礎控除措置がありますので、住宅として不動産を購入された方は、購入後管轄の郡で基礎控除の申請を忘れずに行う事も重要でしょう。Homestead Exemption は「主要住居」のみに限定されますので、別荘、タイムシェアまた投資物件には適用されません。
Homestead Exemption 以外に高齢者控除、身体障害者控除、未亡人控除などもありますので最大限に減税措置を利用する事をお勧めいたします。
申告義務
不動産を保有する事に対して直接申告義務は発生しませんので、不動産から何らかの所得(賃貸料など)を得ない限り特に申告を行う必要はありません。ただし、投資目的で不動産を購入した場合、状況により実際に収入が発生する前に提出する書類がありますので、留意する必要があります。(次号トピック)
以上の点を踏まえ不動産を購入する際には、節税効果やIRSに対する義務なども考慮して購入手続きを進める事が望ましいでしょう。次号では不動産の維持および管理に対する事項を検証したいと思います。