慈善寄付

石川県能登半島を震源とした大地震が1月1日に発生しました。復旧作業が続く中、多くの被災者が現在も避難生活を余儀なくされています。復興支援としてアメリカに住む私達にできる事の一つとして慈善寄付があります。寄付をされる方は、もちろん困っている人を助ける目的で行われると思われますが、場合によっては寄付をする事で税金面で恩恵を受ける事が出来ます。今月は寄付について考えてみたいと思います。

寄付の種類

寄付には金銭的(現金、クレジットカード、ギフト券など)寄付の他に食料品、物品(日用品や衣類など)、有形資産(不動産、株式、貴金属、芸術品)、無形資産(特許、著作権、登録商標、知的財産など)、や時間(労働、ボランティア活動など)の寄付が挙げられます。寄付控除を受けるためには諸条件を満たす必要があり、寄付内容、寄付先、時期、また寄付をされた方の所得状況によってそれぞれ取り扱いが異なります。

寄付控除

個人所得税を算出するにあたり、「標準控除」または「項目別控除」の何れか有利な所得控除を選択する事が認められ、寄付控除は後者の項目別控除の一部として取り扱われます。控除可能な金額には上限が設けられており、納税者の調整課税所得額 (Adjusted Gross Income) の60%までとなります。上限を超える分に関しては翌年度へ繰越が認められているため、所得状況に応じて後年控除する事が可能です。寄付内容が物品の場合、寄付を行った日の市場価格を持って寄付額が決定されます。

寄付金の控除対象期間は、寄付を行った課税年度(個人の場合は、カレンダー・イヤー)によって決まります。その為、今回の能登半島地震に対する寄付金は2023年度の申告ではなく、来年の(2024年度)申告で控除の対象となりますのでご留意ください。また、クレジットガードなどで寄付を行った場合、実際にカード会社に支払いを済ませた日ではなく、寄付金がカードにチャージされた日を寄付日として取り扱われます。

IRSの認可を受けた団体

寄付金は無条件に控除の対象となるのではなく、前述の条件に加え、寄付を受取る側がIRSより適格団体として認定されている必要があります。米国税法上、特定の米国内の宗教、慈善、文化、教育団体が適格と認定されており、それら団体への寄付金が控除の対象となります。その為、GoFundMe など寄付を募るサイトに寄付をされても寄付を受け取る側がIRSに認可されていない場合、寄付金を控除する事は出来ません。ちなみにダラス地域で日々活動をされているダラス日本人会(法人番号: 75-1908141)およびダラス・フォートワース日米協会(法人番号: 75-1616359)は、共に適格団体としてIRSから認可を受けています。(適格団体は次のリンクより検索可)

基本的に米国外の団体への寄付は控除の対象外となりますが、例外としてIRSの認可を受けている海外団体もあります。現在、IRSから適格団体として認定を受けている日本の団体は56組織ありますが、残念ながら日本赤十字社はその認定団体に含まれていません。また在米日本国総領事館もIRSの認定を受けていませんので、寄付控除を必要とされている方はご留意ください。

(寄付控除に関する情報は IRS公報526 を参照)

寄付額が $250 を超える場合、寄付先の団体から寄付内容を明記した領収書の入手が必要となってきます。ただし領収書を申告書に添付する必要は無く、監査や税務調査が入った場合に証明書として提出する必要がありますので大切に保管ください。寄付額が $500 を超える場合、申告書に様式8283を添付する事が義務付けられており、さらに寄付額が $5,000 を超える場合、鑑定書を添付する必要があります。

あとがき

前述のとおり、条件を満たせば慈善寄付を控除する事が認められていますが、寄付をされる殆どの方が、見返りを求めない善意の気持ちで行われていると思われます。一人一人の支援がごくわずかでも、援助が多く集まれば、それが大きな原動力となり多くの被災者を助ける事が出来ます。各々が可能な範囲内で出来る支援を行えればいいでしょう。今回の地震で影響を受けた地域が一刻も早く復旧し、地域住民の日常生活が戻る事を心より願います。

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