時代の変化と共に

現行の法律では自律走行車を交通違反で検挙する事が出来ない。とても興味深いニュースの文面ですが、確かに私達を取り巻く生活環境も技術の進化と共に大きく変化しました。インターネットやデジタル化は社会に大きな影響をもたらし、日常生活や産業に大きな革新をもたらしました。税法も例外ではなく、時代の変化に合わせて改正されています。今月は社会環境の変化と共に進化した税法について話をしたいと思います。

電子商取引と売上税

アマゾンや楽天市場などのネットサイトで注文をし、後日品物を受け取る光景は日常生活の一部として定着しています。購入したいものをインターネットで検索し、買い物かごに入れ、商品代と共に税金や送料を支払って、後は商品が自宅に到着するのを心待ちにする。今となっては普通に受け止められる仕組みですが、数十年前までは法整備が整っていなかったため、取扱いが一部異なっていた事を皆様覚えていらっしゃいますか。

もともと売上税は、課税権を持つ州政府が販売者に対して税金の徴収および納付を義務付ける仕組みとして導入されました。しかし租税の根幹となっていた課税権の判断基準が、まだインターネットが普及していなかった時代に出た判例が基準となっていたため、電子商取引などのインターネットを介するビジネスモデルに対応出来ていませんでした。その為、州政府はインターネット小売業者に対して課税権を確立できず、税収益を大きく取りこぼす形となっていました。更に課税の対象となっていた課税品目が「有形資産」と定義されていたため、ソフトウエアなどの無形資産に対して課税を行う事も出来ませんでした。そこで各州政府は、課税基準を見直し、現代の商取引に沿った税法へと改正する事でイーコマース業者に対して課税権を行使できるようになりました。

Wayfair訴訟後の改正

オンラインショッピングなどの電子商取引に対応できるよう税法が改正されましたが、売上税の徴収および納税義務に制約があったため、税法としての効力を発揮できない部分もありました。しかし、その課税基準も2018年6月21日に連邦最高裁判所が下した判断により大きな転換期を迎える事となりました。Wayfair訴訟の判例によって、判断基準の是非に関係なくある一定額以上の売上または取引件数を上回る場合、州政府は販売者に対して課税権を行使できると事が可能になりました。またこの連邦最高裁判所の判断は、過去の判例を覆す珍しい結果となっています。

判決を受け各州ではWayfair訴訟のモデルを導入すべく売上税の改正を行い、テキサス州では2019年に開催された第86回テキサス州議会で売上税の改正案(テキサス州行政法 3.286)が可決され、2019年10月1日から施行が開始されました。同法の開始により、テキサス州売上税の徴収義務が強化され、それまで売上税の課税権を行使できなかった業者に対して税金の徴収と納付義務を強制できるようになりました。

自律走行車に対する取締り

ここで冒頭の文面に戻りたいと思います。現行のカリフォルニア州交通規制法では自律走行車に対して交通違反切符を切る事が出来ないようです。なぜ取り締まる事が出来ないのか、その理由を求め記事を読み進んでいくと、笑い話のような結末が。

現行の交通規制法は、「車両を走行中の運転手」に対して規定が定められている。つまり、人間が車両を運転する前提で法律が定められているため、運転手がいない自律走行車に対して取り締まる事はできないようです。その為、今後実用化されるであろう自律走行車に対応した法律の改正および法整備が急務となっているようです。また交通規制法が「走行中」と定義されている部分もあるため、それ以外の状況、例えば駐車や一時停止中の自律走行車に対し駐車違反などを取り締まる事ができる面白い側面もあるようです。

あとがき

ちなみにテキサス州政府がオンライン小売業大手アマゾンに対して売上税の徴収と納付を全面的に義務付けたのが2012年7月1日でした。それ以前にアマゾンでで買い物をした際に売上税が徴収されていなかった事を何名の方が覚えているのでしょうか。目まぐるしい速度で変化する現代において、時代に合った法整備と変更は必然的と言えるでしょう。数年後に自律走行車に対する交通違反取締も通常の事となるのでしょう。

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