帰任前の注意事項

海外生活が華やかに映る駐在員。然しながら、会社側の都合で突然引っ越しや移動などを余儀なくされる側面もあり、一概に良い事ばかりとも言えません。米国での勤務が終了し日本への帰国が決まった駐在員の方々は、帰国前にいろいろ対応する事があると思われますが、今月は税務上の面で特に注意して頂きたい事項を中心に話をしたいと思います。

住所変更

通常の郵便物のみならず、IRSからのチェックや通知などの重要書類は、確実に連絡の取れる住所に変更する必要があります。ほとんどの方が郵便局で郵便物の転送手続きを行いますが、IRSへは住所変更の連絡を行っていないのが現状のようです。

ご存知の通り郵便局による郵便物の転送は、ある一定期間に限られているため、それ以降の郵便物は指定の住所へは配達されなくなります。そのため転送終了以降も大事な書類が確実に届けられるように住所変更申込書(様式 8822)をIRSへ提出することをお勧め致します。

銀行口座

帰国後は米国税法上非居住者となるため、米国に銀行口座を残した場合、米国の金融機関から受取る利息収入(米国源泉所得)は非課税となります。だたし、特に何の手続きもしないまま帰国すると利息収入に対し源泉徴収や利息の情報をIRSへ報告され、面倒な事になりかねません。そのため帰国前に、受給者が米国税法上非居住者である事を証明する書類(様式 W-8BEN)を各金融機関に提出し、源泉徴収を避ける手続きをする必要があります。

あまり知られていないルールですが、ある一定期間を超える資産は「届け先不明資産」として取り扱われ、一時的にテキサス州政府の管理下に置かれます。届け先不明資産に対してあくまで持ち主が現れるまで一時的に預かる管理人という立場をとっているため、管理下に置かれた資産は州政府の所有物にはなりません。ただし管理期間や請求期限が設けられていないため、所有者が名乗り出るまで半永久的にテキサス州政府に管理される事になります。

届け先不明資産となる主な要因は、引っ越しによる連絡手段の喪失が挙げられますが、放棄認定期限を超える資産に対しても適用されるため注意が必要です。銀行口座の場合、放棄認定期限は3年と定められているため、数年間米国の銀行口座を利用する予定がない方は、帰国前に口座を閉口する事も念頭に入れる必要があるでしょう。放棄認定期限は資産の種類別に設けられており、次のリンク先から確認する事が出来ます。

引越し費用

引越しに直接係わる費用(運送費・宿泊費を含む旅費)や間接的な費用(例えば移動中の食費等)を会社側が負担した場合には、その金額を所得の一部として認識する必要がありますので、引越をする際には、負担別の金額を把握する必要があります。

出国許可書

米国で課税対象所得を得ていた方が国外に出国する時は、IRSから出国許可書 (Sailing Permit) を入手する事が義務付けられています。出国許可書は、納税が適切に行われている事を証明する書類で、最寄のIRS事務所で必要書類(様式 1040C)を提出する事により入手が可能です。出国の際に係員に提示を求められたら見せる必要がありますが、実際に提示を求められる事は殆どないようで、実際のところ出国許可書の存在自体があまり知られていないようです。

再渡米・入国

帰国後事情により米国へ再入国される場合、帰国後の米国滞在日数が10日を越えてしまうと、再入国後の滞在最終日までさかのぼり米国居住者として取り扱われ、課税対象所得に大きく影響を及ぼす事に成りかねません。そのため、予め再入国の可能性を事前に考慮し、実際に再入国した場合には滞在日数に細心の注意を払う必要があります。

税務申告

日本へ帰国された方(米国市民・永住権保持者を除く)は、米国税法上非居住者となりますが、申告義務の上限を超える米国源泉所得があった場合は、米国で所得税の申告をする必要があります。非居住者または二重身分として申告をされる方は、申告書と共に居住終了宣言書を一緒に提出する必要があります。

帰国の時期(タイミング)

不必要な税務申告を避けるために、年を越さないように年内に帰国される方が多いようですが、申告義務はIRSが定めるある一定額の収入があった場合と定められているため、必ずしも年を越して滞在したからと言って発生するものではありません。また日本の住民税は1月1日現在の居住地で課税してくるため、税法を上手く利用し1月2日以降に帰国すれば日米両国で節税効果を得る事も可能となります。

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