永住権と税金(その①)

 

先日、永住権を持っている知り合いの方から「日本に永久帰国を考えているので税金の事で相談がしたい」と連絡がありました。近年、永住権保持者に対する税法が頻繁に改正されていますので、今月は永住権にまつわる税務事項について話しをしたいと思います。

 
税法上の取り扱い
 
永住権を得る事で米国への出入国が自由になり、また就業への制限が無くなりますが、同時に永住者としての義務も発生しますので永住権保持者の方は特にそれらの義務をしっかり把握する必要があります。

税法上、米国に滞在の外国人は実質滞在条件(IRSが定める計算式を元に米国滞在日数が183日を越えるかを判断する規定)により居住者・非居住者の判定を行いますが、永住権保持者の場合は永住権を取得したその日から米国居住者となるため、実際の居住地に関係なく常に米国居住者として認識されます。そのため外国(米国外)に住まわれても全世界所得が課税の対象となり、二重課税などの不利益が生じる場合があります。

 
申告義務
 
米国市民同様、永住権保持者は、米国税法上「居住者」として扱われるため、IRSで定められている上限を超える所得があれば所得税を申告をする必要があります。申告義務があるにもかかわらず申告を怠った場合、自ら永住権を放棄したと見なされる要因となるため、細心の注意を払って対処する必要があります。

 
二重課税と対策
 
永住権保持者が状況により日本で所得税を納める義務があった場合、日米両国で税金を納める事になる可能性があり、結果的に同じ所得に対し二重課税の不利益が発生する場合があります。このような二重課税を緩和するため外国勤労所得控除 (Foreign Earned Income Exclusion) や外国税額控除 (Foreign Tax Credit) を適用する事により、米国での納税額を低く抑える事が可能です。

 
申告期日
 
米国外に住まわれている永住権保持は、申告日が自動的に2ヶ月延長されるため、通常の4月15日ではなく6月15日が申告日となります。なおここで言う海外在住者とは米国外に居住されている方を指し、海外出張や旅行などで米国外にいる方には適用されません。また年の途中で帰国された方もこの規定は適用されないため、申告期日は他の納税者同様 4月15日となります。

 
その他の申告義務
 
近年特に取締りの強化が行われている外国金融口座や資産開示義務の対象が米国市民および永住権保持者を含む居住者と定められているため、規定額を超える資産をお持ちの場合は、期日以内に申告する必要があります。申告義務がありながらも報告を怠った場合には、多額の罰則金または禁固刑を科せられる可能性もあるので、十分注意する必要があります。

 
[ 要約 ]

  • 実際の居住地に関係なく常に米国居住者扱いとなる
  • 全世界所得が課税の対象となる
  • 上限を超える所得があれば所得税を申告をする義務がある
  • 二重課税を緩和するための措置あり
  • 申告期日は6月15日(海外居住の場合)
  • 外国銀行口座報告書を申告する義務がある(規定額を超えた場合のみ)
  • 外国金融資産報告書を申告する義務がある(規定額を超えた場合のみ)

 

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